新・ことば事情
5033「足掛け10年」
<2012年4月に書きかけました。その際の番号は「平成ことば事情4680」でした>
2012年春、大関に昇進した「鶴竜」は、かなりゆっくりとした昇進だったようです。その様子を指した原稿に、
「足掛け10年」
という表現が出てきました。しかし、
2001年5月にモンゴルから来日した鶴竜席は、「2001年11月場所に初土俵」を踏み、「2012年3月場所後に大関昇進」(3月28日)です。
すると初土俵から大関昇進までの年月は、
「(正味)10年と4か月」
ですし、「初めて大関として迎えた場所」は「2012年5月場所」になるので、さらに2か月を足して、
「(正味)10年と6か月」
になります。
大相撲の場合、土俵(場所)は1月の初場所から11月の九州場所まで。ということは、大相撲での「足掛け10年」が表す期間というのは、
「最短実質8年2か月、最長9年10か月」
になるように思います。つまり、「10年超」は「足掛け」とは言わないと思うのですが、今回は使われています。「10年超」は「実質10年」あるのですから、
「足掛けは使えない」
と思います。もし「足掛け」を使うなら、鶴竜関は、
「足掛け12年」
になると思うのですが。
『広辞苑』を引くと、
「年月日等を数える場合、前後の端数をそれぞれ1として、おおよその数をいう語」
とあり、反対語は「丸」でした。つまり「丸10年と4か月」を「足掛け10年」というのは間違い!と考えられると思います。常識的なところに落ち着きました。