新・ことば事情
5026「ひとりびとり」
3月11日。東日本大震災から丸2年が経ちました。
東京・千代田区の国立劇場では、政府主催の「東日本大震災二周年追悼式」が行われて、天皇・皇后両陛下もご出席になりました。
その天皇陛下の追悼のお言葉の中に、
「ひとりびとり」
という言葉がありました。一瞬、これは、
「ひとりひとり」
と後半の「ひ」は濁らないのではないか?と思ったのですが、その一方で、
「もしかしたら、昔は『ひとりびとり』と濁ったのではないか?」
と思い、辞書(『広辞苑』)を引いてみました。すると「見出し」で載っているのは、
「ひとりびとり」
と「濁る形」でした。その語釈の中に、
「『ヒトリヒトリ』とも」
と、「濁らない」「ヒトリヒトリ」も載っていましたが、あくまでも見出しは「濁る」パターンの「ひとりびとり」でした。そうだったのか!
そのほかの辞書では、
*「ひとりびとり」(濁る)を見出しにしたもの
=広辞苑、精選版日本国語大辞典、新潮現代国語辞典
*「ひとりひとり」(濁らない)を見出しにしたもの
=デジタル大辞泉、明鏡国語辞典、新明解国語辞典、三省堂国語辞典、岩波国語辞典、新
選国語辞典
というように分かれました。どれも見出しにはそれぞれの語が来ていますが、語釈の中に「両方の形」を載せています。
思うに、やはり昔は「ひとりびとり」と濁り、最近は「ひとりひとり」と「濁らない」傾向があるようです。
なお、NHKの夜9時のニュースは「一人びとり」と濁ってスーパーしていましたが、テレビ朝日の「報道ステーション」は、私が見たところでは、
「その部分はスーパーせずに天皇陛下のお言葉だけを流し、そのすぐ後からスーパーでコメントフォロー」
していました。迷ったのかな?