新・ことば事情
5019「精髄」
2月22日に心不全のため亡くなったドイツの国際的な指揮者・サバリッシュさんについて、ベルリン・三好範英記者が書いた2月25日付「読売新聞」の記事、
「ドイツ音楽の精髄を伝える指揮者として日本でも人気の高かったウォルフガング・サバリッシュさん死去。89歳。」
とありました。この中の、
「精髄」
という言葉は、初めて知りました。使ったことがありません。なんとなく「翻訳語」っぽい香りがします。
「真髄」「神髄」
は使ったことも見たこともありますが。
辞書を引いてみましょう。『精選版日本国語大辞典』では、
「精髄」=ものの活動力の根源。ものごとの本質。ものごとのもっとも奥深い大切なところ。神髄。
とありました。用例は、
*「全九集」(1566年ごろ)一「解索の脉は<略>五臓の精髄皆つき死せんとする脉也」
*「天地有情」(1899年)<土井晩翠>序「詩は国民の精髄なり」
とのこと。1566年ごろに使われているということは、「明治期のヨーロッパ言語の翻訳語」ではないのか。中国からの言葉かな。
『デジタル大辞泉』では、
「精髄」=物事の本質をなす最も重要な部分。「和歌の精髄を究める」
そして、『広辞苑』は、
「精髄」=物事の最もすぐれた大切なところ。物事の本質。「日本文化の精髄」
『新明解国語辞典』は、なんとなく「クイズ」っぽい感じで、
「精髄」=それを欠くとその物全体の意義が無くなる、最も重要な部分。
『三省堂国語辞典』は、全て平仮名で、
「精髄」=ものごとの、もっともすぐれたたいせつなところ。
とありました。意味はどれも同じような感じですね。
サバリッシュさんと言えば、私が学生時代20~30年ぐらい前に、よくNHK交響楽団を指揮されていたのを覚えています。
3月9日の朝日新聞夕刊によると、1992年、オペラと歌舞伎が手を結び、バイエルン国立歌劇場の来日公演で、演出を市川猿之助(現・猿翁)さんに頼んだことがあったそうです。当時話題になったような。ドイツの新聞はサバリッシュさんの追悼記事に「彼はほとんど日本人になってしまった」と書いたそうです。合掌・・・。