新・ことば事情
5007「おっしゃるとおりですね」
最近、気になる相槌に、
「おっしゃるとおりで(すね)」
があります。一見、「おっしゃる」は敬語だし、相手が話していることを認めているので、問題ないように感じますが、何か話すたびに、
「全くおっしゃるとおりで」
と連発されると、何かバカにしている(されている)ような感じがするのです。
というのも、「おっしゃるとおり!」という言い切りならば、単なる相槌に過ぎないのですが、実はこの言葉は、複数の人で話している中で、自分の発言権を得るために話し出すきっかけとして、
「まさに今○○さんがおっしゃったとおりなんですが、実は、問題点はほかにもあって・・・」
のように、
「相手の発言を認めたように言うことで、『もうわかった』と、それ以上話すことを中断させる意図がある」
ように感じるのです。「おっしゃるとおりで」と言われると、
「自分の発言が認められた」
と感じて、気持ちよくしゃべるのを中断できますからね。これが、
「いや、全然違う!」
「そうじゃなくて・・・」
と否定的に発言を中断されると、
「何言ってるんだ!まだオレが話しているのに、横から口出しするな!」
と、意地でもしゃべり続けると思うんです。(私はあまり読まないので知らないのですが)もしかしたら「コーチング」や「ディベート」などの本に「相手の話に割って入るテク」の一つとして載っているのではないでしょうか?)
単に「発言の主導権」を自分に取るための「受け」の言葉だと、初めての相手には通用するかもしれませんが、多用することで、
「またアイツは、話を横取りするつもりだな」
と思われる恐れがあります。言葉は気持ちがこもっていないとダメなのです。形式だけではないのです。
似たようなものには、
「話している内容は、難しくてよくわからないしそんなに興味もないけど、なんだかスゴそうなので、とりあえず肯定しておくか」
という場合に使われる、
「奥が深いですね」
とか、
「そうなんですね」
という相槌もありますが、この「おっしゃるとおり」には、それと同じようなニオイを感じます。よく使う人、いるんですよね・・・と言うと、どこからか、
「おっしゃるとおりで・・・」
という声が・・・。日本語って「奥が深い」ですね。