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『道浦TIME』

新・読書日記 2013_034

『看取り先生の遺言~がんでやすらかな最期を迎えるために』(奥野修司、文藝春秋:2013、1、25)

 

3000人の最期を看取った肺がん専門医が、がんにかかったとき・・・これまでにもそういった手記はいくつか読んだことがあった。30歳前後の時に、日本で臓器移植が注目され、生体での移植手術が京都大学病院を中心に行われた頃、臓器移植の本と共にその関連で「終末医療(ターミナルケア)」の本をよく読んだ。あれから20年、私も50代に入り「知命」の年を過ぎると、また、こういったことに興味が出だした感じがする。

この本は著者の名前で読んでみようかなと思った。これまでにも奥野氏の本は、何冊かノンフィクションを読んだことがあったから。

主人公・岡部医師の「遺言」という形で語られていくノンフィクション。ただ途中で著者・奥野氏の「語り(説明)」も入るという形式は、最初のうちは慣れなくて、ちょっと違和感があり読みにくかったが、100ページを超すあたりから入っていけるようになった。

抗がん剤等の治療は(最初は)行わずに、医者から言うと「奇跡」のように余命が伸びた。少しずつ、枯れるように「死」に近づくが、苦しみはない。痛みの緩和ケアは行いつつ、篠直前まで食欲はある。エネルギーをためられないので、その日生きるカロリー(熱量)をその日の食事で摂っているような感じで、「そんなに痩せているのに、そんなに食べるの?本当にがん?」というような感じだったそうだ。病状は、人それぞれなのだ。

それと、岡部医師は「死に向かうがん患者にとって必要なのは『治療』ではなく『心の安らぎ』だ。そのためには『チャプレン』の導入が必要だ」と説く。「チャプレン」は、宗教的な支えを必要とする患者や家族への精神的サポートを行う、牧師に準じた職業をいう。実はこの耳慣れない単語を、私は知っていた。「チャプレン(仏教の坊さん)兼外科医」という男を主人公にした漫画を読んでいるからだ。どうも世の中は、そういったものを欲しているようである。といっても、これが一般化するのは、おそらく10年から15年後になるような気がするけど・・・なんとなく。岡部医師自身は、2012年9月に死去。

 


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(2013、2、16読了)

2013年2月25日 18:51 | コメント (0)