新・ことば事情
5000「七冠の読み方」
ことしの1月16日の「関西情報ネットten!」で、林マオ・アナウンサーが、将棋の、
「七冠」
を、
「ななかん」
と読んでいました。まあ、間違いとまでは言えないけど・・・メールしました。
「将棋の『七冠』は、正しくは、『シチカン』ですよ。」
すると、林アナウンサーから返事のメールが。
「しちかん・・・知りませんでした、以後気をつけます。また、御指導よろしくお願いいたします!ありがとうございました。」
礼儀正しいですね。えらい、えらい。
実は偉そうに指摘している私が「七冠」が「ななかん」ではなく正しくは「しちかん」であることを知ったのは、つい数年前。柳瀬尚紀さんの『日本語は天才である』(2007年・新潮社)を読んでからです。その本の、
「第七章 シチ派VSナナ派 真昼の決闘」
という章の冒頭に、
「ナナと読むかシチと読むか」
が出てきます。この本が出たのは「2007年」。これも「ナナ」と読むか「シチ」と読むかで悩むところ。「第七章」も「ナナショウ」か「シチショウ」か悩む・・・悩まないか。「ナナショウ」ですね、普通。
柳瀬さんが「七」の読み方にこだわり始めたのは、1996年2月14日に将棋の羽生善治さんが、七つのタイトルを独占したとき以来だそうです。その際にテレビ局はこぞって、
「ナナカン、ナナカンオウ」
と大合唱だったと。「冠」を「カンムリ」「カムリ」と「訓」で読むなら「ナナカンムリ」「ナナカムリ」で良いが、「カン」と「音」で読むなら「シチカン」であろうというのが柳瀬さんの主張。そこから「シチ」と読む言葉を"鬼のように"並べていくさまは「お見事!」としか言いようがありません。まさに圧巻です。
そして、「七」を「ナナ」というのが一般的になってしまったきっかけは、なんと、
「安保闘争であった」
と。詳しくは本を読んでください。関西人は「ナナ」ということが多いんですけどね。
さて、ということで、「平成ことば事情」は、おかげさまで、
「連載5000回」
を迎えることができました!!パチパチパチ!
まだ「20世紀」だった1999年7月に書き始めて以来、13年と8か月、仕事もちゃんとやりながら(これも仕事と言えば仕事なんですが)ほぼ「毎日1項目」ペースで書いているというのは、もう自分で自分をほめたいです。
今後も、「1万回」目指して(無理か)頑張ります!
ご声援、よろしくお願いいたします!
(追記)
NHKの原田邦博さんからメールが届きました。
「競馬の世界では『7冠』は『ナナカン』のようで、シンボリルドルフなどの『七冠馬』は、『ナナカンバ』です。島根県にはシンボリ牧場の親戚の酒蔵が、許可をもらって、『七冠馬(ナナカンバ)』という酒を造っています。」
ということで、業種(?)によっては、必ずしも「シチカン」ではないようですね。
原田さん、ありがとうございました。
(2013、2、20)