新・ことば事情
4979「おもたせ」
会社のK先輩からこんなメールをもらいました
「最近ネットなどで、『お土産&おもたせランキング』とか『おもたせに最適』といった
『おもたせ』
の表現がよく出て来てすこし違和感を覚えていましたが、『広辞苑』には『人が手ずから持ってきた贈り物。おみやげ。多く、持参のものを...』とあるので、お土産の意味で『おもたせ』を使っても、誤りではないのですかね。私などは『"おもたせ"でごめんなさいね』と言って、客が持ってきた土産をその場で客に出す時に使うものだと思っていましたが、以前からお土産のことにも使っていたんですかね?少し疑問に思いましたので・・・どうなんでしょうか?」
というもの。私はあまり、
「おもたせ」
って言葉は聞いたことがなかったんですが、と調べてみました。
『明鏡国語辞典』によると、
「おもたせ」=「おもたせもの」の略。客が持ってきた「土産物」の尊敬語。
▽客が持参したものをその客に供してすすめるときなどに使う。〔例)「おもたせで恐縮ですが・・・」
とあります。
「土産物」の尊敬語であれば、別に使っても間違いではないのかもしれませんが、これまでの使用例は、用例にあるようなものが圧倒的だったのでしょうから違和感があるのでしょうね。
ネット検索で引っかかったのがYOMIURI ONLINEの「発言小町」(2007年1月21日)で、『ええっ!「おもたせ」って?』というタイトルで、千葉県在住の40代の女性が、実母がお客様が持ってきてくれたお菓子を、
「おもたせで申し訳ないけど...」
と出しておもてなしをしていた記憶があり、「おもたせ」とは、
「本来ならお客様用にお菓子を用意しておくべきだが、いただいたおみやげを出すことを言う言葉」
だと思っていたが、最近ネット検索で出てきたものが、
「○○のおもたせベスト3」「通のおもたせ」「オススメのおもたせ」「おもたせオンラインショップ」「おもたせの定番」「お友達に差をつけるおもたせ」
など、
「ちょっと高級でお洒落なオトナの手みやげ」
という意味合いで使われているようで違和感があると指摘しており、まさにK先輩が持った疑問と同じものです。
さらにこの千葉の40歳の女性は、
「京のおもたせ」
というのが結構ネットで出て来たので、発祥の地は「京都」ではないか?と類推しています。
さっきも書いたように、私は全然気づかなかったので、この言葉は女性の方が接する機会が多いのかもしれません。「意味が分化」してきているんですかね?