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『道浦TIME』

新・ことば事情

4970「斎場は火葬場か?」

 

1月22日、映画監督の大島渚さんの告別式の模様を「ミヤネ屋」でお伝えしました。その際に「告別式の会場」のことを、リポーターが、

「斎場」

と言っていたことに対して、コメンテーターの松尾貴史さんがCM中に、

「『斎場』というのは『火葬場』をイメージするのでふさわしくない。『式場』『会場』と言うべきではないか?」

と指摘を受けたと、スタッフが伝えてきました。たしかに松尾さんがおっしゃる様に「斎場」という言葉には「火葬場」のイメージがあります。

一応辞書で「斎場」を引いてみました。『広辞苑』では、

「斎場」

  祭りを行う清浄な場所

②葬儀をする場所。(例)青山斎場

③(ア)大嘗祭の時、神饌を調えるために設ける建物。(イ)京都の吉田神社の境内にある吉田神道の神殿の称。

この中の「②葬儀をする場所」というのが、今回の「告別式会場」ですから、間違いとは言えなさそうです。

『精選版日本国語大辞典』にも同じような記述がありました。その4番目に、

「④近代以降、葬儀を行う場所をいう。葬儀場。」

とありました。つまり、もともとは「斎場」というのは、『広辞苑』の①③の意味で、清めて神に祭事(まつりごと)をする場所を指したのが、近代以降に「葬儀場」の意味が加わったと。『精選版日本国語大辞典』の用例は、1909年の『煤煙』という森田草平の作品から採録しています。

ネットで「火葬場、斎場」を検索してみると、全国の多くの自治体で、「葬儀場を併設した火葬場の名前」が、

「○○斎場」

となっているのが目立ちます。そうか、そういうことか!

もともとは「斎場」は「葬儀場」のことを指し、必ずしも「火葬場」を意味することではなかったが、「火葬場」サイドが「火葬」という言葉の持つ重み・呪縛を嫌って、自らを「○○斎場」と名付けるようになった。それが全国に広がったことで、一般の人も「斎場」と聞くと「火葬場」を連想するようになったのではないか?ということではないでしょうか?まだ国語辞典には載っていないみたいですけどね。

(2013、2、4)

2013年2月 6日 10:10 | コメント (0)