新・ことば事情
4966「巨星逝く」
2月3日午後9時59分、歌舞伎役者の市川團十郎さんが、肺炎のため亡くなりました。66歳でした。そのニュースを伝えた2月4日のテレビ朝日のお昼前のニュースを見ていたら、右上のサイドスーパーに、
「巨星逝く」
という文字が出ていて、ちょっと違和感が。「巨星」とくれば、やはり「墜つ」ではないでしょうか?つまり、
「巨星墜つ」
「おつ」と読みますね。
以前、やはり大物の訃報を伝えた「ミヤネ屋」のパネルで、こういうふうに書こうと思ったのでしょうが、なぜか出て来た文字は「堕落」の「堕」で、
「巨星堕つ」
となってしまって、確かに「おつ」と読めますが、それじゃあ、相手を貶めています。恥ずかしかったです。
「墜つ」というのは、もちろん、常用漢字表に読み方(訓読み)が載っていない「表外訓」なので、普通はルビを振るのですが、小さいサイドスーパーにルビを振るのを嫌って、違う表現を模索して「逝く」になったのかもしれません。しかし、これはやはり「成句」として成り立っているものですから、そのまま「巨星墜つ」にした方が良かったと思います。
もしかしたら、谷村新司さんの名曲『昴』で、
「われはゆく さらば昴よ」
という歌詞の「ゆく」と、「昴=星」というような連想があったかも?・・・ないな、これは。
この話を他の人にしたら、
「巨星・・・だったんですかねえ・・?」
と言う人がいました。たしかに「名優」でしたが、「巨星」というには、まだお若かかったような気がしないでもありません・・・。歌舞伎界にとってはとても大切な方だったことは、もちろん、間違いありません。2月4日の日本テレビの『ニュースevery.』では、
「歌舞伎界の大黒柱」
という表現をしていました。合掌。