新・ことば事情
4962「手洗いとうがい」
(2012年9月3日書きかけました。当時の番号は「平成ことば事情4818」)
家に帰ったら必ず、「手洗い」と「うがい」をします。
さて、この、
「手洗い」
は「洗う」という動詞を含んでいますが、
「うがい」
は、動詞を含んでいるんでしょうか?パッと見たところは、含んでいないような感じがするのですが。
辞書を引いてみましょう。『新明解国語辞典』『三省堂国語辞典』『新潮現代国語辞典』『岩波国語辞典』には「うがい」は載っていましたが、その動詞は載っていませんでした。
『精選版日本国語大辞典』には、
「うがう」
という動詞が載っていました!「夏目漱石」の「漱」(すすぐ)に似た漢字で、
「嗽う」
です。意味は、
「うがいをする。口をそそぐ」
です。用例は1081年ごろの「書陵部本名義抄」という書物だそうです。古い言葉ですね。『広辞苑』『デジタル大辞林』にも「うがう」が載っていました。
うーん、でもいまや「死語」でしょうねえ。「名詞形」だけが残っているのか。「うがい」以外に「うがう」ことってないですもんね。その辺が「手洗い」の「洗う」との違いかな。「汎用性のある動詞」の方が、「動詞」としては残ると。「活用の機会の少ない動詞」は「名詞の中」に化石のように閉じ込められて、なんとか形を留めると。そういうことかもしれません。