新・ことば事情
4958「ささって」
三重県伊賀上野出身の両親(77歳)。家に行った時に、質問を受けました。
「ささって」
という言葉を使うか?というのです。伊賀では言うそうです。私は普段は使いませんが、そういう言い方が、地方によってはあることは知っていると答えました。意味は、標準語でいう所の、
「しあさって」
ですね。あした、あさって、しあさって(ささって)。
ネットで調べると、
「『ささって』を使うのは三重県の一部などごく少数なので『方言』と言ってもいいだろう。飛騨方言では『一昨日』の事を『ささって』と言う。富山、飛騨、三重県の方言のようだ。堀井令以知『ことばの由来』(岩波新書)によると、堀井氏は『ささって』の語源を『再さって』、共通語『しあさって』の語源を『四あさって』と考えている。たしかに、『来週』の次は『再来週』、『来年』の次は『再来年』。つまり『あさって』に『再(さ)』を付けて『さあさって』=『ささって』と単音化、短呼化した結果のようだ。堀井氏説を敷衍すると、「ささって」を使っていた所へ「しあさって」が輸入されてきたのだ。」
「『しあさって』は漢字で『明々後日』と書くが、本来は『次明後日』または『四明後日』。『ささって』は漢字にすると『再明後日』または『三明後日』になる。
『あした(明日)→あさって(明後日)→しあさって』
の場合は、『次明後日』は、
『あした→あさって→ささって(再明後日)→しあさって(四明後日)』
になる。」
というような記述がありました。これだと、本来の(共通語の)「しあさって」と「しあさって(四明後日)」の日にちが、ずれるのでは?
堀井先生の本(『言葉の由来』)は読んだことがあります。もう一度読んでみよう。
また、『全国方言一覧辞典』で「しあさって」の全国の言い方を調べてみたら、
「ヤノアサッテ」=北海道・岩手・宮城・埼玉・新潟
「ヤナサッテ」=青森・秋田・福島
「ヤナアサッテ」=茨城・栃木
「ヤネアサッテ」=群馬・神奈川・山梨
「シアサッテ」=千葉・東京・石川・福井・長野・岐阜・滋賀・京都・大阪・兵庫・和歌山・鳥取・広島・山口・徳島・香川・愛媛・高知・福岡・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島
「サーサッテ」=富山
「シガサッテ」=静岡
「ササッテ」=愛知・三重
「シヤサッテ」=奈良
「シャーサッテ」=島根
「シアサッテー」=岡山
「シラアサッテ」=佐賀
「ッアサッティヌナーチャ」=沖縄A
「アサティヌナーチャ」=沖縄B
随分バリエーションがありますが、全国的に多いのは「シアサッテ」。アクセントは県によって違うようですが、ここでは省略します。三重県・愛知県では「ササッテ」のようですね。富山の「サーサッテ」も同じ仲間だな。
解説を読んでみると、
「あさっての次の日。生活に基本的な暦日の数え方に地方差があるとは、実に日本列島は複雑である。共通語の『シアサッテ』は北海道や東北・関東地方の一部にはなくて、それらの地域では『ヤノアサッテ・ヤナサッテ』が分布している。中部地方では『ササッテ』が栄えていて独自である。一覧であげたほかに、群馬・埼玉『シアサッテ』、鳥取『シラサッテ』がある。」
と記されていました。「ササッテ」は「中部地方独自の言い方」のようです。
神奈川は横浜出身の山本隆弥アナウンサーに、
「『ヤネアサッテ』って言う?」
と聞いたら、
「なんですか?それ?『シアサッテ』と言いませんよ」
という答えが返ってきました。その県内すべてが、該当する方言を使うわけでもないようですね。