新・ことば事情
4954「『さびしい』と『さみしい』」
「寂しい」「淋しい」
と書いて、
「さびしい」
と読むか、
「さみしい」
と読むか?ま、読み方と言うか、両方の「言い方」がありますよね。
たとえば、私が男声合唱で歌ったことのある曲の「歌詞」の中で出てくるものを見てみると、
「なごり雪」 =「さみしい」
「シクラメンのかほり」 =「さびしい」
「月光とピエロ」の「月夜」=「さびしい」
という感じで分かれています。例が少ないですが、
『日本語雑記帳』(岩波新書)という本の中で田中章夫先生は、
「『さみしい』は東京の下町の方言である」
と記していました。実際、「さびしい」は「書き言葉的」であり、「さみしい」は「話し言葉的」ですね。
グーグル検索では(1月27日)、
「さびしい」= 489万件
「さみしい」= 776万件
「寂しい」 =4210万件
「淋しい」 = 575万件
でした。ネットでは「話し言葉的」である「さみしい」がよく使われているのかもしれませんね。
(追記)
2月27日、今月3日に亡くなった十二代目・市川團十郎の葬儀告別式で、喪主を務めた息子の七代目・市川海老蔵の今の心境を語ったあいさつの最初の一言は、
「とても、さみしいです。」
というものでした。
「さびしい」ではなく「さみしい」というところに、心情が表れているような気がしました。単に海老蔵の語彙に「さびしい」がないだけかもしれませんが。
(2013、2、28)