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『道浦TIME』

新・読書日記 2012_227

『続・暴力団』(溝口敦、新潮新書:2012、10、20)

2012年は、いわゆる「半グレ」集団によるとみられる犯罪が大きく取り上げられた年でもあった。この「半グレ」という言葉の名付け親が、本書の著者の溝口敦氏だそうだ。なぜ「半グレ」がクローズアップ(のさばる)ようになって来たのか?その背景には、全国すべての自治体で制定・施行された「暴力団排除条例」があるという。20年ほど前に制定された「暴対法」(暴力団対策法)という「法律」は「国」が決めたものだが、実はこの法律は"暴力団の存在を認めた"上で対策を定めた法律だった。それに対して「暴力団排除条例」は、"暴力団そのものの存在を認めない"条例なのだ。本来「法律」の方が、地方自治体の「条例」よりも上位に位置するが、今回の「排除条例」は、より厳しく暴力団を追い詰めることになった。"自治体"と言えば、"警察"は「大阪府警」や「福岡県警」の様に各自治体の所属である。そして暴力団などを取り締まる現場で働くのは、その警察の警察官だ。そういった「現場」が暴力団を排除する、暴力団の存在そのものを、表の世界から抹殺する"道具"として「排除条例」は使われている。暴力団の生活の糧である「しのぎ」をしらみつぶしに封じ込め、さらに、これまでは暴力団同士の抗争で相手の暴力団員を殺害しても、警察や一般人の様に無期懲役や死刑というようにはならなかった(暴力団員の命は軽かった)ために、暴力団員は殺(あや)めることがあっても、一般人や警察官を殺めることはなかったのだが、最近は相手の暴力団員を殺害しても「死刑」になるようになってきた。「それなら、警察や一般人でも同じではないか」と暴力団側が考えるようになったとのこと。イタリアのマフィアなどが裁判官や警察官を殺害するシーンがその手の映画ではあるが、それと同じようになって来ていると。つまり、世界的に見ても、まともな国で、国家として「暴力組織」を認めている国(=日本)はない(だからマフィア等の組織は地下へ潜る)のだが、他国と同じように「条例」で縛ることで、暴力組織の地下化を進めているのではないか、というのが著者の見方。そしてその条例や法律にとらわれず、組織化されていないグループ、それが「半グレ」集団であると。ある種の「隙間産業」的な働きをしているのではないか。ただ著者は、そういった暴力団を追い詰める「排除条例」の動きを否定してはいない。暴力団に対する新たな動きの副作用が出ている時期ではないか、というように見ているように感じた。


star4

(2012、12、14読了)

2013年1月 4日 13:37 | コメント (0)