新・ことば事情
4914「吉田松陰の辞世の句と安倍総裁」
10月25日、石原東京都知事の辞任表明会見がありました。(もう、ずいぶん昔の話だなあ・・・まだ2か月も経ってないけど)
その際に感想を聞かれた自民党の安倍総裁が、自身の選挙区である山口県(=長州)出身の「吉田松陰の辞世の句」を引いて、
「"留め置かまじ 大和魂"ですね」
と言いました。それを聞いて「なんかちょっとヘンだなあ」と思って調べてみると、吉田松陰の辞世の句は、
「身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも 留(とど)め置かまし 大和魂」
でした。
え?どこが違うかって?正しい方は、
「留め置かまし」
で、安倍総裁の発言は、
「留め置かまじ」
つまり、「まし」か「まじ」かということですが、世の中は、澄むと濁るで大違い!
「まし」は「留め置こう」の意味の「留め置かん」の意志の助動詞「む(ん)」に、強めの「し」がついて「まし」となっているのですが、濁って「まじ」になってしまうと、
「留め置かない」「留め置くことなど許されない」
と、まったく逆の意味になっているではありませんか!マジかよ!なんで誰も突っ込まなかったんだろうか!?
松陰は、家族宛てには『永訣書』というものを残しており、こちらに記された辞世の句は、
「親思う 心にまさる親心 けふのおとずれ 何ときくらん」
という、これも大変有名な句ですよね。故・安倍晋太郎さんは、どんなお気持ちでしょうか?(選挙が終わったのでようやく書けました。)