新・ことば事情
4878「R.I.P.」
『週刊文春』(2012年11月8日号)の113ページ、能町みね子さんというコラムニストの方(?)が「言葉尻とらえ隊(52)」というコラムの中で取り上げていたアルファベット3文字の言葉が、
「R.I.P.」
でした。コラムによると、
「人が亡くなった時に使う」
そうです。特にツイッターで、誰かの訃報が流れたとき、最近は必ずと言っていいほど、亡くなった人の名前のあとに「R.I.P.」が並ぶのだそうです。「去年、スティーブ・ジョブズが亡くなったときに、この『R.I.P.』がツイートされ、それ以来日本でも一般化し始めたのではないか?」
と、能町さんは書いています。ツイッターをしない私は全く知らない言葉ですし、ツイッターをしていて、こういったことに詳しいWアナウンサーに聞いても「知らない」とのことでしたから、それほど一般的ではないのではないでしょうか?Wアナウンサーは、
「『R.S.V.P.』はよく見るし、使う」
と言っていました。これは、
「リプライ・シルヴプレ(返信を下さい)」
の意味だそうです。これも知らんな。
能町さん自身は、最近までこの言葉を知らなかったそうで、
「羅列される『R.I.P.』にはまったく心がない」
と否定的です。
ところで、この「R.I.P.」の意味は、
「安らかに眠れ」
という意味のラテン語で、使われ方から見ると、
「ご冥福をお祈りします」
というような意味のようです。そのラテン語の綴りも書かれていたので見てみると、
「requiescat in pace」
なんだそうです。その頭文字を取って、「R.I.P.」。カタカナにすると、
「レクイエスカット イン パーチェ」
あ!これを見て私の記憶の片隅から、「あれ」が立ち上がりました。
「これ、知ってる!ベルリオーズ作曲の『ファウストの劫罰』の中に出てくる『アーメン・コーラス』の直前の歌詞だ!」
そうです、今から31年前の1981年、私がまだ学生の時に、東京交響楽団と一緒に小林研一郎先生の指揮で歌った、ベルリオーズの『ファウストの劫罰』。その歌詞の中にあったラテン語だったのです。
同じように、『ファウストの劫罰』は、日本語の訳詩の中に、部分的にラテン語の歌詞が混じっていて、学生歌で出てくる「ガウディアムス(Gaudiams)」とか、カエサルの言葉「ヴェニ、ビディ、ビキ(Veni Vidi Vici=来た、見た、勝った)」などもありました。当時はあまり意味も解らずに歌っていたけれど、こんなところで再会できるなんてなあ・・・。面白いですね。
(追記)
アメリカ在住のI先輩からメールが届きました。
「『R.I.P.』は、アメリカでは一般に、"Rest in Peace"の略だと理解されて使われています。また、『R.S.V.P.』は、仏語の"Répondez s'il vous plaît" の頭文字をとったもので、カタカナにするなら、『レスポンデ・シル・ヴ・プレ』。英語の『リプライ(Reply)』と混ぜて使うのはおかしいです。結婚式の招待状などの最後に、『出欠の返事をください』という意味でよく使われます。」
とのことです。どうもありがとうございました!
(2012、11、9)