新・ことば事情
4872「『きのう』のアクセント」
中堅アナウンサーのニュースを聞いていたら、
「きのう、夜10時ごろ、大阪市○○区で火事がありました。」
という原稿の「きのう」を、
「キ/ノ\ウ」
と「中高アクセント」で読んでいました。実はこれは間違い。
「きのう」という言葉には「2つのアクセント」があるのです。それも「品詞」によってアクセントが違うのです。
「キ/ノ\ウ」(中高アクセント=名詞)
「キ/ノウ」 (平板アクセント=副詞)
なのです。ですからこの場合の原稿は、「きのう」が「(火事が)ありました」にかかるので、「副詞」として使われているので、
「キ/ノウ」 (平板=副詞)
と読むべきでした。逆に、「名詞」として読む場合は、起伏型「中高アクセント」の、
「キ/ノ\ウ」
でいいのです。具体的に言うと、
「火事があったのは、きのう。」
と「体言止め」される場合。これは「体言=名詞」ですから、「中高アクセント」になります。これは「時制」を表す「おととい」という言葉にも同じ区別があります。まあ文脈上、区別をつけにくいケースもあるのですが。
このアクセントの区別は『NHK日本語発音アクセント辞典』にも載っていますが、気付いていないアナウンサーが多いのではないでしょうか?
なぜ、このようなアクセントの区別があるのかを考えてみましたが、「名詞」は「主語」になることもあって、「強調」される必要がある。「平板アクセント」では強調ができない。それで「中高アクセント」になっているのではないか。
逆に「副詞」の場合は、後ろに来る言葉を形容するのだから、あまり「中高アクセント」で強調されてぶち切れになっても困る。「形容」するためには「繋がり」が必要。つまり一体感。そのため「コンパウンド」のように「平板アクセント」で、後ろと繋げるのではないか?というように、実は「アクセント」には「意味上の違い」が表れていると考えるのですが、いかがでしょうか?