新・ことば事情
4863「マサイ族」
「ミヤネ屋」の世界電波ジャックのコーナーで、アフリカ・ケニアの、
「マサイの人たち」
を瀬良ディレクターが取材しました。その際に(取材に行く直前に)、
「マサイ族」
という呼び名は使ってもいいのか?と質問を受けました。別に「~族」を全部使ってはいけないということではないので、大丈夫だと思うよ、と答えましたが、調べてみると、2010年11月の新聞用語懇談会秋季総会(鳥取)で、毎日放送の委員から同じような質問が出ていました。その時の各社に意見は、こんな感じでした。
(1)「マサイ族」という表現をテレビ欄に出したら拒否され「マサイ」「マサイ人」に直されたが、「マサイ族」は使ってはいけないのか?各社の基準は?(by毎日放送)
*過去に「部族」「族」の使用に関して「申し入れ」があったことは事実。現在は使用禁止していない。ルワンダの虐殺の際には「フツ族」「ツチ族」「部族」が頻出した。(朝日新聞)
*(使用禁止を)決めていない。クレームもない。「ロマの人びと」「ロマ族」「ロマ民族」も使っている。(毎日新聞)
*規定はない。ただ「ロマ民族→ロマ人」、「クルド族→クルド人」などとしている。データベースでは過去5年で20件「マサイ族」が出てきた。「マサイ人」は0件。(読売新聞)
*「マサイ族」「マサイ人」はデータベースで各1件。民族名で「マサイ族」は「要注意語」だが、「~族」の使用を禁じてはいない(日経新聞)
*昔は禁止していたが、今は使用禁止ではない(東京新聞)
*『共同通信記者ハンドブック第12版』では「~族」は使わないことになっている。「マオリ族→マオリ人、マオリ」「マサイ族→マサイ人、マサイ」としている。ただ中国の少数民族の「チベット族」「ミャオ族」やミャンマーの「カレン族」、アフガニスタン・パキスタンの「カチ族」などでは「~族」を使う。(共同通信)
ということで各新聞社・通信社で「マサイ族」を「使わない」ことにしていたのは共同通信だけでした。