新・ことば事情
4849「額づく」
大相撲秋場所千秋楽で、横綱白鵬を破って2場所連続全勝優勝を決めた大関・日馬富士が、白鵬を下手投げで一周振り回して投げた後に、自分も土俵に倒れて、しばらく立ち上がれなかったシーンは感動的でした。
「渾身(こんしん)の一番」
というのは、こういう勝負を言うのでしょう。私がもし野田首相なら、総理大臣杯を授ける時に、つい
「感動したっ!」
と言ってしまいそうなぐらい。(余談ですが、そういえば「渾身」の「渾」は、「褌」に似ています。)
その日馬富士関、立ち上がる前に、「おでこ」を土俵に付けました。「土俵の神様に祈っていた」そうです。立ち上がった時に、額(ひたい)には土俵の土がついたままでした。それを見て私は、
「ああ、これが『額(ぬか)づく』という事なんだな」
と思いました。ふだんあまり「額づく」なんて言葉は使いませんが、こういうシーンを見て、ふと頭に浮かんだ言葉でした。
そして、「額づく」というのは、動作もさることながら、
「(なんらかの)神様に祈る、頭(こうべ)を垂れるという気持ち」
が自然に取らせる動作なのだということを感じたのでした。
日馬富士、白鵬、ありがとう!(と、思わず「額づく」)。
なお、日馬富士は9月26日に、正式に第70代・横綱に決まりました。全身全霊で頑張ってくださいね。