新・ことば事情
4821「とむね」
8月29日のお昼のニュースを見ていたS記者が質問してきました。
「いま、MBSのニュースを見ていたら『10棟』を『とむね』って言ってたんだけど、そんな読み方、あるのかい?」
ああ、そうですか、「10棟」を「とむね」。
日本語の数の数え方には大まか言うと、
「漢語系」「和語系」
の2つがあります。「漢語系」は「いち、に、さん、し・・・」、「和語系」は「ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ・・・」ですね。
ですから「10棟」を「漢語系」で読めば、
「ジュウムネ」
「和語系」で読めば、
「とむね」
とこうなる。ただ、数え方の最近の傾向としては、「和語系」で読むのは、「ひと」「ふた」までで「3」からは「漢語系」の「さん」と読むことが多いですね。
「10」を「と(う)」と読むのは、
「10の市町村が参加して」
というような場合に「10」を「とう」と読むことがあります。「ジュウ」とも読みます。それと、「針」で「10針」を、
「とはり」
と読む場合もありますが、まあいまや原則、「ジュウ」と読むでしょうなあ、ということで。で、MBSは誰が読んでいたんですか?
「ベテランの男のアナウンサーだったよ」
「柏木アナウンサーだ」
と言うので、その場面を私は見てなかったのですが、柏木さんにメールをしたところ、
「わはははは~。さすがはYTV報道部ですね!!!実は、わが社の放送用語ハンドブックでは『十棟=トムネ。最近はジュウムネとも読む』となっています。別にそれにこだわっているわけではありませんが『ここはひとつ、頑固にやっちゃるか!』と報道デスクに宣言して犯行に及びました。古い表現を何でもかんでも『本来は~』というのは好きではありませんが、何でもかんでも『十=ジュウ(ないしはジウ)』と決め付けて言葉のプロが読むのもいかがなものかという反逆です。」
という愉快なメールが届きました。