新・読書日記 2012_136
『普通の家族がいちばん怖い~崩壊するお正月、暴走するクリスマス』(岩村暢子、新潮文庫:2012、4、1)
著者は「アサツーディ・ケィ」の「200×ファミリーデザイン室」に勤務している調査の専門家。サブタイトルの「崩壊するお正月、暴走するクリスマス」につられて買った。単行本は、もう5年ぐらい前に出ていたそうで、養老先生のこの間読んだ本にも、(ここに出てくるような)家族の状況を調べた本として、この本が紹介されていた。養老先生の本を読む前に、この本を買って読んでいるところだったので、偶然の一致にびっくりした。
しかし、巻頭から巻末まで徹頭徹尾、「ダメな若い主婦」を叩いているような感じがして、データを解説しただけだとしても、かなりイヤな気分になるのは事実。「そこまで言わなくても・・・」という感じがする。しかし、最後に出てくる、「言っていることと、やっていることが全く違う主婦」には憤りを感じるし、そういった傾向が、今の30代、40代、はては50代にもあるのは確かだと感じる。
それは女性だけの責任ではなく、それを許している旦那・夫にも責任があるに決まっている。とすると、「世の中全体の風潮」ということになるのだが・・・。そこにまでは、視点が届いていないのが残念。あくまで主婦、そして「母と子」にとどまっている気がした。
「家族のつながりとは何か?」「主婦のわがままを許している夫の、家庭内での地位は?主導権は?」ということも考えさせられる。家庭のことを妻まかせにして顧みないから、このような事態になったのではないか?また、主婦は「ノリ」を重視するという記述を読んで「アッ!」と思った。それは「いじめ」をする「子供たちと同じ」ではないか!山本七平の『空気の研究』に出て来た「空気」が、現代においては「ノリ」という言葉で表されているのではないか。「無言の強制力」である。これに抗するには「ハブ」(=村八分)にされる「覚悟」が必要で、そんな中でも生きていける「強い自己」を持っている人しか、抗することはできないのだと思う。そういった考察にまでは到達していなかった。マーケティングには、そこまでの考察は必要ないということかもしれない。