新・ことば事情
4812「マラソンの『拾う』」
ロンドン五輪の女子マラソンの中継を聞いていたら、実況アナウンサーと解説の有森裕子さんのコメントの中に、
「重友選手は、前の選手を拾っていかなくてはなりません」
というような文脈での、
「拾う」
という言葉がよく出てきました。別に、投げ捨てたサングラスや、給水用のボトルを拾うのではありません。これは、
「前を走る選手を拾う」
のです。それも「先頭集団を走る選手」を「拾う」のではなく、
「先頭集団から こぼれ落ちてきた(=脱落した)選手を拾う」
のですね。
「前を走る、自分から一番近いところの選手」を「キャッチアップ」して「競う」ことで、さらに前へ進む力・気力を養う、レース中の戦い方の一つが、この、
「拾う」「拾っていく」
ということなんでしょう。おそらく辞書には載っていない言い回しでしょう。辞書、引いてないけど。載っていたらすごい!
ちょっと『三省堂国語辞典』と『精選版日本国語辞典』だけ引いておこうかな。
「精選版」にこの使い方の語は載っていないですが、3番目の意味の、
「多くの物の中から選び取る。必要なものだけを選び出して利用する」
というのは近い意味のように感じました。