新・ことば事情
4807「何、一番したいですか?」
8月2日の日本テレビ「スッキリ!」。ロンドンのスタジオで、競泳男子200m平泳ぎ・銅メダリストの立石諒選手に対して、司会の加藤浩次さんが
「何、一番したいですか?」
という質問をしたところ、立石諒選手は、一瞬、聞き取れなかったような顔をして、
「え?何、自慢したいですか?」
と聞き返しました。いったいあなたはなんて失礼な質問をするんだ?という感じで。確かにそう聞こえました。
これは、「一番したいですか」と「自慢したいですか」の違いが、
「一番」と「自慢」
の部分、ローマ字で書いてみると、
「ichiban」と「jiman」
ですね。最初の「i(い)」が聞こえにくくて、さらに「chiban(ちばん)」が濁って「jiman(じまん)」に聞こえる恐れがあるということですね。本来ならば、
「何が一番したいですか?」
と助詞の「が」を入れれば、こういった聞き間違いは防げました。
というのも、「何一番」の「何(nani)」のあとの「一番(ichibann)」がつながって、「なに」の「に」と「いちばん」の「い」がくっついてしまって「いちばん」の「い」が脱落したのです。それで、
「なにい、ちばんしたいですか」
この「ち」が次の「ば」の影響で濁って、さらに「ば」が、同じく唇を結んでから発音する、子音「M」で「ア行」の音の「ま」に聞こえた。それで、
「一番」→「自慢」
に聞こえたというわけです。「鼻濁音のような音の響き」もあったのかもしれません。
それを防ぐには、
「一番したいのは何ですか?」
と聞けばよかったのです。
相手に聴き間違いを起こさせないしゃべり方というのもあるのですね。その逆も。
他山の石とします。