新・ことば事情
4769「性癖」
先日、「ミヤネ屋」の新聞コーナーを担当している後輩のIアナウンサーが、
「道浦さん、『性癖』って言葉は、ちょっとお昼の番組のオンエアーでは読んじゃだめですよね?」
と言うので、
「なんで?別にかまわないんじゃないの?セイヘキだろ」
と言うと、
「でも・・ねえ・・・セイヘキですから・・・エヘヘ」
と恥ずかしそうに笑うので、「なんで笑うのかな?」と思ったのですがすぐに「あっ!」とその原因を思いつきました。そこでIクンに、
「おまえもしかして『性癖』って、セクシャルな意味だと思ってるんじゃないか?」
と聞き返すと、(鳩に豆鉄砲を打ったことは、私はありませんが)鳩が豆鉄砲を食らったような顔をして、
「え!?違うんですか?」
というので、「やっぱり!」と思いました。そういえば以前、
「最近、『性癖』を『セクシャルな意味』だと思っている人が増えている」
という話を、NHK放送文化研究所の塩田雄大さんに聞いたのを思い出したのです。そのときは「そんなバカな」と思ったのですが、どうやら、その「バカな」が進行しているようです。国語辞典を引いてみると、
「生まれつきての性質。また性質上のかたより。くせ」(『精選版日本国語大辞典』)
とありました。『広辞苑』は、
「性質のかたより。くせ。(例)変な性癖の持ち主」
とあり、例文はちょっと「セクシャルな感じ」へのにおいを感じないでもありません。
そして『デジタル大辞泉』は、
「性質上のかたより。くせ。(例)大言壮語する性癖がある。◆「性」を性質の意でなく、性交の意ととらえ、誤って、性的なまじわりの際に表れるくせ・嗜好、交接時の習慣・習性の意で用いることがある。」
と、これはIアナウンサーの「間違った性癖」の理解のことをあからさまに書いてあります。でもやはり「誤って」なんだ。誤って使われるケースは、増えているのでしょうかね?