新・読書日記 2012_113
『「疑惑」は晴れようとも~松本サリン事件の犯人とされた私』(河野義行、文藝春秋:1995、11、30第1刷・1996、5、5第8刷)
菊地直子、高橋克也容疑者逮捕をきっかけに、オウム真理教の一連の事件をおさらいしようと読み始めた書籍の2冊目。1994年に起き8人が死亡した松本サリン事件で、当初「加害者」と目されて警察の厳しい取調べを受け、マスコミも「犯人視」していた河野義行さんが、当時のメモなどを元に、どのような扱いを受けたかを記した一冊。オウムのことはほとんど出てこないが、警察の見込み捜査とマスコミへのリーク、でっち上げによる冤罪の構図がはっきりと見えてくる。われわれマスコミ側は、そういった警察側の意図に載せられないようにしないといけないのだが、事件から18年経った今、「こういうことは、今はない」とはっきり言えるかというと、自信はない。しかし現場は、常にそういった警察側の「リーク」がありうると疑って取材に当たっているのは確かだと思う。我々は常に「被疑者=犯人ではない」ということを念頭に置いておく必要があるということを、改めて思い起こさせてくれた一冊。
なお、サリンの被害で寝たきりになっていた河野さんの妻・澄子さんは、14年間意識が戻らないまま、2008年8月に亡くなった。
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