新・読書日記 2012_111
『「当事者」の時代」(佐々木俊尚、光文社新書:2012、3、20)
「当事者」というのは、情報の産直。産地直送!メディアは仲介業者、つまり問屋。それは不要か?広告代理店は?旅行会社は?共通点は?
500ページ近いこの新書、最初に「読んでみるかな?」と思ったきっかけは、世界初のトーキー映画「ジャズ・シンガー」について描かれていたからです。それは、白人が顔を黒く塗って黒人の格好をして歌う「ミンストレル・ショー」というものだったらしい。初めて知った。また冒頭で、早稲田大学在学中から評論活動を行ってきたライターの「津村喬」という人物を紹介しているが、この人は、実はジャーナリストの高野孟さんの弟さんだというのだ。高野さんには以前「ミヤネ屋」にもご出演いただいてたので、親しみがあって読み進めたということもある。
そして全編を通じて描かれているのは「弱者への憑依(ひょうい)」という現象。戦後日本で行われてきたことは、この「弱者への憑依」という考え方で読み解けるのではないかと著者は指摘。単なる「弱者への目線」が深みにはまると、弱者に憑依してしまって、客観的に見ることが出来なくなるというあたりは、納得がいった。その家庭で本多勝一の名前が出てきたりして、なんか懐かしかった。(最近読む本には、なぜかあちこちに本多勝一の名前が出てくる。甲南大学の学生に「本多勝一って知ってる?」と尋ねたところ、20人ほどの学生の中に本多勝一の名前を知るものは、1人もいなかった・・・)これからは、そこからの脱却を目指すべきではないかと。なかなか納得のいく話である。
ただ、やはり壮大な500ページ近い展開に最後まで読んでついて行けるのか?というぐらいの力作。私は読み始めから(途中で中断したりして)読み終えるのに3か月近くかかりました・・・。