新・ことば事情
4752「『逃走』か?『逃亡』か?」
<※2009年10月26日に書きかけたときは「平成ことば事情3892」でした>
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2009年10月26日、酒井法子被告(当時)の初公判で、酒井被告の「空白の6日間」は、「逃走」か?「逃亡」か?
という疑問が出ました。その際は、
○「逃亡」 △「逃走」
という判断をしました。意味の違いは、
「逃走」=逃げること
「逃亡」=逃げて身を隠すこと
です。東京地裁前から中継した日本テレビの前野記者も、1回目は「逃亡」、2回目は「逃走」と混在していました。
私は個人的には、酒井被告が「東京・渋谷の現場から立ち去った」のは「逃走」、「6日間にわたって逃げ回った」のは「逃亡」だと思います。ただ、この時にややこしかったのは、6日間のうち前半は「失踪」で、途中から逮捕状が出たので、結果としてその全体が「逃亡」となってしまったことでしょうか。
その後、2009年11月12日~13日に高知市の高知新阪急ホテルにおいて開かれた新聞用語懇談会秋季合同総会で、
「英国人教師殺害事件の市橋容疑者が送っていたのは『逃走生活』か?『逃亡生活』か?あるいは『逃走劇』か?『逃亡劇』か?」
という質問が出て、これに対して、産経新聞の委員が、
「逃げた瞬間は『逃走』だが、逃げ回ったら『逃亡』。『逃走』と『逃亡』は法律上も区別されている。」
と答えました。
さらに3年が経過。2012年6月6日、今度はオウム真理教最後の特別手配犯の高橋克也容疑者。彼の持っている金は、
「逃亡資金」か?「逃走資金」か?これは、
×「逃亡資金」→○「逃走資金」
だと思います。法律上の区別は分かりませんが、「資金」という言葉の前に付く言葉は「逃走」なのではないでしょうか?Google検索では(6月14日)、
「逃走資金」= 8万6500件
「逃亡資金」=10万2000件
で、「逃亡資金」の方が多かったです。私の感覚とは逆だなあ。
ちなみに「逃走資金」も「逃亡資金」も、検索して最初に出てきたのが、
「融資 銀行ローン」
「逃走資金」や「逃亡資金」でも、「融資」していただけるのでしょうか?ネットだと?
(2012、6、14)
(追記)
高橋容疑者は、2012年6月15日午前、東京・大田区蒲田で逮捕され、17年に及ぶ逃亡生活にピリオドを打ちました。
(2012、6、17)