新・ことば事情
4747「『起こる』か?『起きる』か?」
ことし(2012年)のゴールデンウイーク最終日の5月6日午後、茨城県つくば市などで、
「竜巻」と見られる突風が発生し、男子中学生1人が死亡、40人が重軽傷を負いました。
この「竜巻」ですが、「起こる」でしょうか?それとも「起きる」でしょうか?
私は、
「起こる」
だと思いました。理由は、「自然発生」は「起こる」。「人為的なもの」「人為的に起こす」ものは、それによって「起きる」のようなイメージです。
ついでに「どこででも起こる」か?「どこにでも起こる」か?
この場合は、「で」=「どこででも」。
「で」は「発生場所」を示しているのに対して、「に」は「移動」を伴う感じがします。「竜巻」という生き物がどこからかやってくるのではなく、気象状況に応じてその場所で発生するのだと考えれば「で」ですね。よそからやって来るなら「に」ですが。台風は「に」かな。感覚的なものですが。
ことしは「竜巻」の発生が多いように感じます。異常気象なのかな?
(追記)
NHK放送文化研究所の塩田雄大さんからメールを頂きました。既に2000年11月に、塩田さんがこれに関連したことを、NHK放送文化研究所のサイトの「最近気になる言葉」で書いてらっしゃいました。(以下、引用)
(Q)「津波が起きる」と「津波が起こる」とでは,どちらが正しいのでしょうか。
(A)「津波が起こる」というのが伝統的な言い方で、「津波が起きる」はどちらかというと新しい表現です。「津波」や「地震」の場合、現代ではどちらを使ってもかまいません。また、ニュアンスの違いもほとんどありません。 解説次の文を見てみましょう。
○ 早く起きる子ども
○ 偏食が原因で起こる病気
「起きる」は目を覚ますこと、また横になっている状態から立ち上がることが、もともとの意味です。つまり、主語は「人間か動物」です。
いっぽう「起こる」は、伝統的には、病気や災害などある状態・状況が発生するときに用いられてきました。つまり、主語は「出来事」です。
しかし、もともとは「起こる」と言っていたところに「起きる」を使う場合がたいへん多くなっています。たとえばさきほどの文では、
○ 偏食が原因で起きる病気
と言ってもほとんど抵抗は感じられません。いっぽうこの逆はだめで、
× 早く起こる子ども
とすると、何のことかよく分からない文になってしまいます。
いわば、人間・動物専用だった「起きる」が、出来事の領域にまで意味を広げてきて、「起こる」は劣勢に立たされている、と言ってもよいでしょう。この変化はかなり昔から始まっているので、いまさら「昔の使い分けをしっかり守れ」と言っても、やや無理があります。ただし、いまでも「起こる」しか使えない場合もあります。たとえば、「サッカーブームが巻き起こる」や「拍手がわき起こる」などは、「巻き起きる」「わき起きる」とは言えません。また「国が(産業が)おきる」とは言いません。この場合は必ず「おこる(興る)」です。 (メディア研究部・放送用語 塩田雄大)
分かりやすいですね。「起こる」のほうが古くて、のちに、人間に使っていた「起きる」を自然現象などにも使うようになったということでした。私の感覚も(どちらが古いかということは別にして)あながち間違ってなかったようですね。塩田さん、ありがとうございました!
(2012、6、14)