新・ことば事情
4746「奪還と奪回」
(※20012年3月8日に書きかけてほったらかし。3か月経過しました。オセロ・・・懐かしい)
「オセロ」関連で・・・中島さんを例の部屋から外に連れ出したことを指して、「ミヤネ屋」ではこれまで「奪回」は使わず、
「奪還」
としてきました。それは変わりませんが、きょう(3月8日)発売の『週刊文春』の特集の見出しでは、
「オセロ中島 奪回!」
と「奪回」を使っていました。そこで念のため、意味の違いを書いておきます。
『広辞苑』では・・・
「奪還」=うばいかえすこと。 (例)選手権を奪還する
「奪回」=うばいかえすこと。奪還。(例)陣地を奪回する
ありゃ。意味は同じか!用例の違いで言うと、「奪還」は「一度保持したことのある(していた)価値のあるものを取り返す」という感じ、「奪回」は「一度保持していたものに価値があるかどうかは、客観的には分からない感じ」が少しして、もっと簡単に言うと、「奪還」は「人に対して使える」が、「奪回」は「人には使えない」というニュアンスを私は感じています。『三省堂国語辞典』の用例では、
「奪還」=「人質を奪還する」
「奪回」=「陣地を奪回する」
とあって、まさに私の語感はこれです。『精選版日本国語大辞典』では、
「奪還」=奪いかえすこと。奪回。
「奪回」=奪いかえすこと。とりもどすこと。奪還。
となっていて、その意味に差異は認められません。『新明解国語辞典』は、
「奪還」=相手の手中に帰したものを、こちらが実力でもう一度取り返すこと。(例)選手権を奪還する
「奪回」=(敵に奪われていた陣地などを)奪い返すこと。(例)政権奪回を目ざす
とあって、「奪還」の意味に強い意欲を感じます。オセロ・中島さんの場合はやはり「奪還」ではないでしょうか?「生還」などとも意味が通じるところが「還」にカンじられますし。
こういうときこそ、これだ!と思って『日本語 語感の辞典』(中村明著、岩波書店)を引いてみると・・・「奪還」も「奪回」も載っていないのでした・・・残念!
皆さんは、どう感じられますか?
(追記)
なんと「平成ことば事情552」で「奪回と奪還」というタイトルで書いていました・・・2002年2月、10年前です。覚えてないようなあ、そんなの。
(2012、6、27)