新・ことば事情
4745「みえかくれとみえがくれ」
「見え隠れ」
という言葉の「隠れ」を、皆さんは濁りますか?それとも濁りませんか?
私はこれまで、
「みえかくれ」
と濁らずに読んできました。ところがアクセント辞典や辞書を引くと、
「みえがくれ」
と濁って載っているのです。それ以来、濁って「みえがくれ」と原稿は読むようにしていますが、他の人が読むのを聞いても、皆「みえかくれ」と濁っていません。
どうしようかなあ、と思っていたときに、ハッと気付きました。
「『みえがくれ』と『みえかくれ』は、別の言葉なんだ!」
つまり、辞書に載っている濁った「みえがくれ」は、「隠れ方」の一つとして、
「ちょっと見えてしまうような隠れ方」
を指しているのではないでしょうか?それに対して、濁らない「みえかくれ」は、
「見えたり、隠れたりしている状態」
を指すのではないでしょうか?少なくとも私が「みえかくれ」と言う場合の意識(意味)は、「見えたり、隠れたりする状態」を指して言っています。
そう考えるとスッキリしますが、濁らないパターンの「見え隠れ」はこれまで辞書に載っていなかったということは、「新しい言い方、意味」なのでしょうかね?
(追記)
この項目をUPするや否や、NHK放送文化研究所の塩田雄大さんが資料を送ってくださいました。ありがとうございます。
『放送研究と調査』2011年11月号の「女は男より『罪作り(つみつくり)』~言葉のゆれ調査(平成23年1月)から②」(太田眞希恵)という記事で、これは「濁るか濁らないか」についての調査結果と分析です。
その中に、「見え隠れ」もあって、全国の20歳以上の男女1323人に調査したところ、
「人の姿が見え隠れする」
の「見え隠れ」の読み方は、
「ミエカクレ」=91%
「ミエガクレ」= 8%
だったそうです。
そして、国語辞典58種を調べた中で、「見出し」もしくは「その意味の説明の中」で「ミエカクレ」を載せているもの、「ミエガクレ」だけのものは、
戦前 戦後昭和 平成
ミエカクレ 1 2 8
ミエガクレ 31 11 12
という結果になったそうですが、「見出し」で濁らない「ミエカクレ」を採用しているのは、『明鏡国語辞典』(2002)、『大辞林 第3版』(2006)、『三省堂国語辞典 第6版』(2008)だけだそうです。
(2012、6、11)