新・ことば事情
4735「ぬるぬるのアクセント」
岩波新書の『語感トレーニング』(中村明)を読んでいたら、122Pに
「ぬるぬる」
という言葉が出てきました。この言葉の持つ「語感」で、ふと疑問が。
この言葉、発音するときには、
「ぬ\るぬる」(頭高アクセント)
「ぬ/るぬる」(平板アクセント)
の2種類のアクセントを使いますよね。これって意味上の使い分けはあるのでしょうか?という疑問です。
「語感」ですから、「個人差」がずいぶんあるとは思うのですが、私の「語感」では、
「ぬ\るぬる」(頭高アクセント)の方が粘り気があるような気がします。
一方の「ぬ/るぬる」(平板アクセント)は、滑りそうではありますが、粘度が低いような感じ。
そのあたりほかのアナウンサーに聞いてみたところ、私と全く逆の感じを持つ者もいました。そんなとき、虎谷温子アナウンサーが
「『デジタル大辞泉』には、アクセントの区別が載っていますよ!」
と教えてくれました。それによると、
「ぬ\るぬる」=形容詞。
「ぬ/るぬる」=は名詞と形容動詞
となっていて、「アクセントの違い」で「品詞」が変わるようなのです!新発見!
似たようなケースでは、例えば「きのう」「おととい」といった時制を現すもので、
「き/の\う」(中高アクセント)=名詞
「き/のう」 (平板アクセント)=副詞
「お /とと\い」(中高アクセント)=名詞
「お/ととい」(平板アクセント)=副詞
という区別があるものがあります。それに似ているのでしょうか?
早稲田大学の非常勤講師で『三省堂国語辞典』編者の飯間浩明さんに、
「『ぬるぬる』とか『ぴかぴか』『すべすべ』といった擬態語のアクセントが、『ヌ\ルヌル』(頭高=副詞)、『ヌ/ルヌル』(平板=名詞・形容動詞) というふうに2種類あって、意味(というか「品詞」)が違う、ということは、常識なのでしょうか?あまり目にしたことはないのですが。そしてこういったものは、擬態語すべてに2種類のアクセントがあるわけではないですよね?その区別はどうなっているのでしょうか?」
とお聞きしたところ、
「少なくとも『新明解アクセント辞典』には載っていますよ。『ぬるぬる』で引いてみると、その項目に『→57』とあります。そこで、巻末『アクセント習得法則』の『57』を見ると、『同じ語、または掃除した語が重複した三・四拍の和語』という節があります。そこに、ほぼおっしゃるようなことが書いてあります。」
というお返事をいただきました。
ところで、全部、アクセントは2つあって、「2回繰り返しのオノマトペ」は全て、そうなのでしょうか?「ピカピカ」「ビンビン」も2種類ありますね。
でも、「ぐんぐん」「ぐいぐい」「ごくごく」「ドシドシ」「ガンガン」「ビシビシ」などは、「平板アクセント」はないですね。なんでなの?
※2011年の6月ぐらいに書いていて、1年間ほったらかしになっていたようです・・・。当時は「平成ことば事情4394」。