新・ことば事情
4734「代と代目」
デパートの贈答品売り場で見かけた表記に、
「稲庭うどん 七代・佐藤養助」
というのがありました。創業万延元年なのだそうです、この稲庭うどん。問題はこの、
「七代」です。これは、「七代目」ではないのですね。なぜ?「代」と「代目」の違いは?以前から気になっていましたが、これを見てハッと気付きました。
もしかして「代目」という言い方は、
「他人が客観的に呼ぶ場合」
なのではないでしょうか?それに対して、「代」は、
「本人サイドの自称(名乗り)」なのではないでしょうか?そういえば「桂文枝」を継ぐことになった「桂三枝」さんが配った手ぬぐいも、
「六代・桂文枝」
と「代」で染め抜かれていました。また、「林家こぶ平」の名前の方がまだなじみがある「林家正蔵」(まだ「彦六の正蔵」のほうが印象、強いです)さんも、襲名披露での口上で、
「九代・林家正蔵」
と「代」で言っていました。
歌舞伎の場合の、新聞表記を見ると、
「二代目・市川亀次郎」「四代目・市川猿之助」「九代目・市川中車」
となっていますが。これは「客観的に表現するとき」は「代目」なのでしょう。
あ、そうか、自らは外から数えるのではなくその「代」を生き抜くだけですから「代」ですが、歴史の中でその名前を捉えると「代目」ということになるのかな。ちなみに、
「九世 市川團十郎」
のように、「世」という数え方もありますが、これは、
「既に亡くなった人(故人)」
を指すのではありますまいか?あ、でも「エリザベス2世」はご存命ですね。在位60周年、おめでとうございます!
「世」については以前も疑問を呈してことがあったような気がするぞ。検索したら、「平成ことば事情1707 代と世」というのがありました。それを読んだら、より一層難しくなってきました。「世」は一旦置いておいて、「代」と「代目」は、こういうことじゃないかなあと思うのですが、いかがでしょうか?