新・ことば事情
4719「クンチ」
「龍神マブヤー」の映画の紹介を見たときに、
「クンチ」
という大切なものがある、というシーンが出てきました。沖縄の方言で意味は、
「やる気、根気」
なんだそうです。それを聞いて「あ!そうか!」と思い当たりました。
「コンキ」→「クンチ」
これは、沖縄方言の特徴の一つである母音の変化、
「o」→「u」
「ki」→「ti」
という母音の変化を考えれば、ごくごく分かりやすい言葉ですよね。そして「クンチ」と言って思い出すのは、そう、長崎の
「おくんち」「長崎くんち」
というお祭りですね。この「くんち」は、沖縄方言の「クンチ」、つまり「根気」なのではないか?と思いました。長崎も沖縄も中国の影響を受けている意味では同じ流れですし。
それで思い出した。
物を二つずつ数えるときの数え方で、
「二、四、六、八、十」
と数えるときに、皆さんはこの「数」をどういう風に言いますか?
「ニー、シー、ロー、ハー、トー」
ですか?それとも、
「ニー、シー、ロー、ヤー、トー」
ですか?以前調べたところによると、ポイントは「八」の読み方。これを、
「ハー」=西日本
「ヤー」=東日本
という大まかな傾向が見られたのです。ただ、「ヤー」文化圏の東日本で「ハー」も使われている地域というのが、青森の津軽、秋田といったあたり。また「ハー」文化圏で「ヤー」も使われているというのが鳥取あたりという「例外」もありましたが、これはおそらく、
「北前船の寄港地」
だったから、東西それぞれの数え方が混ざって残っているのではないか?と推測しています。また、「ハー」文化圏の「長崎」と「福井」では「ハー」ではなく、その前の「六」が「促音」だったり「撥音」だったりして、
「ロン、パー」「ロッ、パー」
というように「八」が、
「パー」
と発音されていたのです。これについては、
「港町なので、『六』に勢いが付いて、その影響で『八』が『パー』になったのではないか?」
と私は思っていたのですが、もしかしたら、これらの「パー」は、
「中国語の影響で、そもそも最初から『八』は『パー』と言うのではないか?」
と思い至ったのです。中国語では「パー」ですよね、きっと。マージャンでは「八」は「パー」と言いますね。また、韓国では「八」は「パル」ですね。1988年のソウルオリンピックのときに「88(年)」を「パルパル」と言っていましたから。
日本語で言う「半濁音」の「パ」と清音の「ハ」の差が、中国語や韓国語にあるのかは知りませんが、「ハ」と「パ」が似ているのは確かです。