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『道浦TIME』

新・読書日記 2012_077

『自分のなかに歴史を読む』(阿部謹也、ちくま文庫:2007、9,10第1刷・2011、12、25第2刷)

 

「ポリフォニーの成立」について知りたくて、アメリカ在住のI先輩の勧めで「阿部謹也」の本を捜して読んでみた。「ポリフォニー」の成立が「カトリックからプロテスタント誕生に伴って、教会建築の変化に伴って生まれた」とした伊東乾の著作(『人生が深まるクラシック音楽入門』幻冬舎新書)に「目からウロコ」の気持ちだったが、阿部の記述によると、もっともっと奥深いものがありそう。(そういえば、たしか伊東乾の本の参考図書の中にも「阿部謹也」の名前があったなあ)

キリスト教が目指したのは「世界の一元化」、その方法として当初、採られたのが「単一」のメロディーによる「モノフォニー=グレゴリオ聖歌」。しかし、それによっては「一元化」はなされなかった。自然な発生的に生まれていた「ポリフォニー」を取り入れることによって、キリスト教世界の拡大はなされたのではないか。もちろん日本のように「一元化」には向かない国もあると。日本での音楽は「娯楽」(あるいは「国歌」のように「娯楽」ではないものもあるが)と考えられがちだが、ヨーロッパでは「音楽」は「算数」「幾何」「天文」と並ぶ「四大学科の一つ」であったと。「音楽」によって「真理」を究めようとしていたのですね。

この本は、もっと読まれてしかるべき本だと思う。単行本が出たのは1988年、もう四半世紀前です。これまで私は「阿部謹也」という人の名前は知っていても、本を読んでいなかったが「ハーメルンの笛吹き男」などヨーロッパの「メルヘン」の中に、庶民の生活に関する「真実」があるということに気づいて、そういった本も書いているそうです。「ハーメルンの笛吹き男」を取り上げたもの、と聞いて思い出したのは『YAWARA!』『20世紀少年』などでおなじみの「浦沢直樹」の『マスターキートン』。たしかあの中にも出てきたなあ。阿部謹也の本がベースだったのかも。読みたいなと思いました。ヨーロッパの「中世」の研究をされていたのですね。「中世」という意味では「網野善彦」に通じるところがある。「アジール」(避難場所)に関する記述などは、やはり「洋の東西」を問わず、宗教の迫害と、そこから逃れる場所としての「アジール」があったのだと納得。

大変平易な文章で読み易かったが、最後の解説を読むと「中高生向け」に書かれたということで納得。でも内容は奥の深い話です。

 

 


star5

(2012、4、24読了)

2012年5月10日 17:46 | コメント (0)