新・ことば事情
4711「アウン・サン・スー・チー『氏』か?『さん』か?」
4月20日に行われた新聞用語懇談会放送分科会で、
「ミャンマーの民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんの呼称について」
という質問が出ました。
「共同通信では、アウン・サン・スー・チーさんが4月1日の連邦議会の補欠選挙で勝利し、連邦下院議員になることが確実になった。これを受けて"新聞記事"は3日の夕刊段階で『おことわり』を送信した上で、3日付夕刊用から見出しや記事で『アウン・サン・スー・チー氏』と表記している。共同通信の"放送ニュース"では、長い間使われた『さん』が浸透していることや、女性に『氏』を使うと違和感があるという理由から、正式に議員になるまで当面は『さん』を継続することにしたが、各局の対応は?」
というものでした。これに対して各局の委員の回答は、
(NHK)「氏」を使い始めている。
(日本テレビ)読みは「さん」。スーパーは「氏」。厳密な取り決めはない。
(TBS)スーパーも読みも「さん」。今後検討する。
(フジテレビ)「さん」。議員となって公的になれば「氏」もありうる。
(テレビ朝日)読みは当面「さん」。政党の「党首」など「役職」が就けばそれにするかも。
(テレビ東京)4月1日からスーパーも読みも「氏」に変更した。
でした。
その後、日本テレビ系列では、放送を見る限り、5月2日の「スー・チーさん、国会初登庁」を受けて、「さん」→「氏」に変更された模様です。
2012年4月19日の新聞各社朝刊の表現は、以下のとおりで全部「氏」なのですが、名前の表記で「・」を使う社(読売・産経・日経)と使わない社(朝日・毎日)があります。
読売新聞
(見出し)「スー・チー氏24年ぶり外遊」
(本文) 「アウン・サン・スー・チー氏」
産経新聞
(見出し)「スー・チー氏24年ぶり出国」
(本文) 「アウン・サン・スー・チー氏」
日経新聞=共同通信の配信記事
(見出し)「スー・チー氏、6月に訪欧」
(本文) 「アウン・サン・スー・チー氏」
朝日新聞
(見出し)「スーチー氏が2カ国訪問へ」
(本文) 「アウンサンスーチー氏」
毎日新聞
(見出し)「スーチー氏20年遅れ『授賞式』か」
(本文) 「アウンサンスーチー氏」
でした。新聞協会のご意見番・伊藤さんによると、
「毎日新聞は、昔『・』を入れないと、社告で宣言した。その昔は『さん』ではなく『女史』を使っていたが、さすがに最近は見かけない」
とのことでした。そういえば「女史」はもう「死語」ですかねえ・・・。これも「民主化運動の成果」なのでしょうか?