新・ことば事情
4693「帰化」
<2011年2月6日にメモを書き始めました。その時点での数字は「平成ことば事情4289」>
2011年1月のサッカー・アジアカップ決勝で、延長後半4分、見事な左足ボレーで決勝点をたたき出した「李忠成選手」。その新聞記事を読んでいると、
(読売)帰化4年
(朝日)韓国から国籍を変え
(毎日)07年に日本国籍を取得した李
(産経)2007年に日本に帰化し
(日経)<文言なし>
でした。「帰化」という表現は「読売」と「産経」が使っていました。
その後、2012年4月16日の「ミヤネ屋」で、「カンボジア国籍を取得」し、見事カンボジアの「ロンドン五輪マラソン代表」に選ばれた「猫ひろし」選手に、国際陸連が「待った!」をかけたというニュースを取り上げました。
ライバルの選手が、選考終了後のきのう(4月15日)のレースで、五輪標準記録(2時間18分)には及ばないものの、猫選手の記録(2時間30分台)を7分以上上回る「2時間23分」台の記録を出したことと、今年になって国際陸連が打ち出した参加資格に、
「国籍変更後1年以上たっていること」
という条文があることがネックになると。いまさら言われても・・・という感じですよね。「後出しじゃんけん」ではないのか?
このニュースの「ミヤネ屋」のスーパーで、
「帰化選手」
という表現が出てきたので、これは、
「国籍変更選手」
に変更しました。
そして、放送後のスタッフへのメールで、
「『帰化』は要注意語」
として周知しました。
△「帰化選手」→○「国籍変更選手」
『読売テレビ放送用語ガイドブック第二版』128ページで「帰化(人)」を見ると、
「『帰化』には朝廷の支配下に入るという意味がある。現在は教科書・百科事典など『渡来人』『渡来した人々』と記載している。なお国籍法では『帰化』が使われており、法律の説明などでの使用は可。しかし、一般的には差別的表現と捕らえる人たちも多く、言いかえが望ましい。→『渡来人』『渡来した人々』。また『帰化』を動詞として使用する場合、たとえば『Aさんが帰化した』は『Aさんが日本国籍を取得した』と言い換えることが出来る。」
となっています。しかしここでは、日本人がカンボジア国籍を取得することは、想定していませんでした。