新・ことば事情
4688「近まる」
NHK放送文化研究所が出している『放送研究と調査』の2012年4月号のコラム「ことば言葉コトバ」で本多葵研究員が、
「春が近まる」?
というタイトルのコラムを書いていました。それによると、
「春が近まってきました」
という表現はおかしいか?という問い合わせを受けたことで、
「~まる」
について考察しています。私も考えることにしました。
「近まる」
は、やっぱりヘンですよね。「~まる」は、「形容詞の語幹+まる」で、
「~の状態になる」
という意味ですが、この「形容詞」には使えるものと使えないものがあるようです。「~まる」で、「これはOK」というものは、
「高まる」「強まる」「深まる」
を多田さんは挙げています。このほかに私が思いついたのは、
「温(暖)まる」「弱まる」「早まる」「広まる」「狭(せば)まる」
といったところ。それ以外のものを『逆引き広辞苑』で調べると、
「改まる」「薄まる」「固まる」「静(鎮)まる」「長まる」(=長くなる体を伸ばしてながながと横になる)「温(ぬく)まる」「和(のど)まる」(=のどかになる。しずまる。おちつく)「低まる」「緩まる」
というのがありました。聞いたことがないものもありますが。
ここから私の考察。「~まる」が付くことのできる形容詞は、
「客観的な価値機銃(尺度)で対語を持つ、程度を表す形容詞」
で、「対語」のうちどちらかと言うと、
「プラスイメージ」
のほうが、よく使われるのではないでしょうか?「近い」「遠い」という対語は、
「定点からの距離(程度)」
を指すので、「客観的な尺度」とはなりえないので、「~まる」を付けた形は使えないのではないでしょうか?
しかし、一筋縄ではいかないあな。もう少し考えてみたいと思います。