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『道浦TIME』

新・ことば事情

4685「七角形の読み方」

 

「七角形」

 

の読み方は、

「シチカ(ク)ケイ」(シチカッケイ)でしょうか?それとも、

「ナナカ(ク)ケイ」(ナナカッケイ)でしょうか? 

※(ク)は母音の無声化

「ミヤネ屋」のナレーターのMさんに質問を受けました。

うーん、どっちでもいいんじゃない?分かれば。

本来「シチ」だけれど「ナナ」が聞いて分かりやすいので、そっちかなあ。

「シチ」の場合「イチ」と聞き間違いやすいから「ナナ」にするということはあるけど、

「一角形」(イチカクケイ、イチカッケイ)

は存在しないから、間違わないだろうから「シチカ(ク)ケイ」(シチカッケイ)でもいいのかなあ。ちなみに「二角形」も存在しません。

そう思って、『NHK日本語発音アクセント辞典』を引いてみると、「三角形」から「六角形」までと「八角形」は載っているのに、「七」は抜けています。

「九角形」「十角形」も載っていません。

「シチ」「ナナ」は、どちらでも良いのでしょうか?

用語委員会でご一緒している、NHKの原田邦博さんに聞いてみたところ、

「あくまで"私見"ですが、読みは『ナナ』でよいと考えます。『ナナカクケイ』『ナナカッケイ』の2通りがありえますが、どちらを優先するかは微妙です。『三角形』『六角形』『八角形』についても、それぞれ読み方は順不同で、一貫性はありません。また『ロク~』『ハチ~』という読みは採用していません。『ロッ~』『ハッ~』のみです。『七角形』を載せていない意味は不明ですが、幾何学以外には使わないためではないでしょうか。『六角形』までは数学以外でもよく使うことばで、『八角形』は『夢殿』などがあるため、採用したのではと推測されます。『九角形』以上も採用していません。」

というお返事を頂きました。ありがとうございます。

国語辞典は「何角形」まで載せているのでしょうか?調べてみましょう!!

「見出し」に載っているかどうかが基準です。

3・4・5・6・7・8・9・10角形

*『精選版日本国語大辞典』= ○・○・○・○・×・○・×・× 「かっけい」

*『広辞苑』       = ○・○・○・○・×・△・×・× 「かくけい」△「八角」

*『新明解国語辞典』  = ○・△・×・×・×・×・△・× 

   「かくけい」△「四角」「八角」

*『三省堂国語辞典』   = ○・△・×・×・×・△・×・× 「かくけい」△「四角」「八角」

*『新選国語辞典』    = ○・△・×・×・×・×・×・× 「かくけい」△「四角」

*『新潮現代国語辞典』  = ○・○・×・△・×・△・×・× 「かくけい」△「六角」「八角」

*『岩波国語辞典』    =○・△・×・×・×・△・×・×  「かくけい」△「八角」

*『デジタル大辞泉』   = ○・○・○・○・×・×・×・× 「かくけい」

*『明鏡国語辞典』    = ○・×・×・×・×・×・×・× 「かくけい」

 

というような結果でした。「七角形」を載せている辞書はありませんでした。

△印は、「四角」「六角」「八角」のように「形」が付いていない形では載っていた、というものです。また「八角」は「かたち」ではなく、「中国料理の食材」として載っているものが多かったようです。また、『広辞苑』には仏教用語の「七覚(しちかく)」が載っていました。ネットでの検索件数はどうか?調べてみましょう。頻度順に並べると、

(1)「三角形」=41200000

(2)「四角形」= 7810000

(3)「六角形」= 6890000

(4)「八角形」= 6210000

(5)「五角形」= 1010000

(6)「七角形」=   60200

(7)「九角形」=  42500

(8)「十角形」=   23800

で、明らかに「七角形」「九角形」「十角形」の出現頻度は「2けた」落ちます。大きめの辞典と小さめの辞典では載せられる語彙数が違うので、そのあたりの判断もあるのでしょうね。このあたりが、辞書にも反映されているのでしょうかね。

また、「~かっけい」という「促音」を基本にしているのは『精選版日本国語大辞典』だけで、あとは「~かくけい」という形(「く」は無声化でしょう)を基本にしています。ちなみに数字を「洋数字」にしてみると、

(1)「6角形」= 298000

(2)「3角形」= 220000

(3)「5角形」= 181000

(4)「8角形」= 175000

(5)「7角形」=  91500

(6)「4角形」=  68600

(7)「10角形」=13100

(8)「9角形」=     6020

と、ずいぶん順序が入れ替わりました。

「三角形」と「四角形」「漢数字」で書くほうが多い、つまりそれだけ「ひとつの単語」として認識・定着していることを示しています。

それに対して「洋数字」で書かれることが多い「6角形」は、数字部分が入れ替わり可能な、

「○角形」

の中で、使用頻度の多い数字と言えるでしょう。

 

 

(2012、4、12)

2012年4月13日 18:58 | コメント (0)