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『道浦TIME』

新・ことば事情

4683「笞(しもと)」

 

瀬戸内寂聴と梅原猛の対談集『生ききる。』(角川Oneテーマ212011710第1版・20119305版)を読んでいたら、

「笞(しもと)」

という言葉が出てきました。能『葵上(あおいのうえ)』で、六条の御息所(みやすどころ)が病に伏している「葵上」を、

「笞(しもと)で叩く」

と。心の底で嫉妬した六条の御息所の生霊が、もしかしたら行ったかもしれない。「無意識」の世界・・・という「近代文学」、犯罪心理を表していると、対談の二人は説きます。「自分の意識」というのは果たして「無意識」か?「意識」か?哲学的な世界に入っていきます。

で、この「苔(こけ)」と書いて「しもと」と読むものは、一体なに?

『精選版に本国語大辞典』を引くと、載っていました!

「しもと(笞・楚)」=「(「しもと」を用いたところから)刑罰の具。木の若枝でつくったむち、または杖。また、それで打つ刑。すわえ。しもっと。」

うーん、全然わかりません・・・・。「木の枝」と「こけ」は同じものなのか?

実はもうひとつ「しもと」が載っているのですが、この漢字はワープロでは出てきません。草冠の下にゴチャゴチャっと書いてあります。もしくは木へんに「若」と書いて「しもと」、あるいは「細枝」と書いて「しもと」。もうこうなると「当て字」ですよね。意味は、

「枝のよく茂った若い木立。若い小枝の長く伸びたもの。すわえ。」

「枝」のことを「しもと」と言うようで、それをむちのように用いてビシバシやる刑罰「しもと」と言うと。「すわえ」って何だろう?

「すわえ(楚・「木若」・杪)」(1)木の枝や幹から、まっすぐに細長く伸びた若い小枝。すわい。ずわい。すわえぎ。(2)刑罰に用いる道具。むち。しもと。また、それで打つこと。(3)舞楽で舞人が持つ白い木の棒。

「すわえ」と「しもと」は同じような意味ですね。

気になったのは、「すわえ」を「ずわい」とも言うと。「ずわい」と聞いて思い出すのは、もちろん、

「ズワイガニ」

です。もしかしたら、

「足が枝のように伸びているから」

この名前があるのではないか?これは想像ですが、そうだとしたら、いろいろ古い言葉が現代につながっているんですね。

でもなぜ「苔(こけ)」と書いて「しもと」と読むかは分からずじまいでした・・・。

あ、そうだ、こういうときは「漢和辞典」だ!

『新潮日本語漢字字典』を引いたら、「しもと」と読む漢字が4種類、載っていました!!

その中で、「笞」を見ると、

「むち・しもと・むちうち」

と3つの読み方が。

①むち・しもと。人を叩くための竹や木の棒。人を苦しめる厳しい戒めにたとえる。<「むち」は多く「鞭」と書く>

②「①」で人を叩く。また、人を厳しく責めて苦しめる。しかって励ます。"むちうつ"とも読む。

 

ここで私、気付きました・・・「苔」じゃなかったんだ・・・「竹」かんむりの、

「笞」

でした。そりゃ「こけ」のわけないわな。

「草かんむり」が「苔」、「竹かんむり」が「笞」。

ややこしいなあ。

「楚」は「すわえ」。「楚輪(そわ)」さんというサッカー選手が昔いたけど、あれは「楚」だけでも「すわ(え)」→「そわ」と読んだのかも知れんなあ。

 

(2012、4、10)

2012年4月12日 21:32 | コメント (0)