新・読書日記 2012_062
『犠牲のシステム福島・沖縄』(高橋哲哉、集英社新書:2012、1、22)
著者は、今一番信頼の置ける学者の一人かもしれない。
今回の原発の事故によって明らかになった「福島」というところの持つ運命。「原発」を持つことによって、何を得て、何を失ったのか。その構図は、「米軍基地」を持つ「沖縄」にも共通する部分があると。ある意味「日本全体」にとっての「必要悪」のようなものをどこが引き受けるかとなったときに「弱い立場の県」が引き受けざるを得なくなっていることが、誰の目にも明らかになったのだ。それは、悪い面が出た場合には「犠牲」という名で呼ばれるものかもしれない。常日頃から「悪い面が出るかもしれない」という恐怖を感じつつ、「でも、出るわけない」と信じたふりをしつつ生きていくことの重さ。それをわれわれ国民も「知って」しまった。「犠牲」が「可視化」された現在、国民ひとり一人が、逃げることが許されない立場におかれているのだ。
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