新・ことば事情
4678「倍ぢかく」
『巴里の空の下オムレツのにおいは流れる』(石井好子、河出文庫:2011、7、20第1版・2011、7、30第2版)の62ページに。
「大通りの肉屋はたしかに品物が上等だったが、値段も角の肉屋の倍ぢかくするので、私はふだんは安い店で買っていたのだった。」
という文章が出てきました。この本の単行本が出たのは1963年(昭和38年)。「三丁目の夕日」の時代。東京オリンピックの前。もう50年近く前です。
そのころは、「倍ちかく」ではなく、濁って、
「倍ぢかく」
という言い方があったのか!?
Google検索(4月10日)では「倍ぢかく」で出てきたのは、
「倍痔核」
という漢字の並び。「痔核」の前の「40倍」とかの言葉がくっついていただけで、本来の意味での「倍ぢかく」は見当たりません。
石井さんだけが使っていた言い方なのかどうか、わかりませんが、文字には残っているんですね。