新・ことば事情
4660「ドハンサム」
故・米原万里さんの『他諺(たげん)の空似』を読んでいたら、
「ドハンサム」
という表現が出てきました。
「ド」「ど」の付く強調表現については、以前、
「どキレイ」(平成ことば事情0486)
「どストライク」
「ドハマリ中」(平成ことば事情4500)
などで書きました。そのほか、2006年8月25日放送のNHKの番組『知るを楽しむ選・人生の歩き方』で、京セラの稲盛和夫氏を取り上げたドキュメントのタイトルが、
「稲盛和夫 ど真剣に生きる」
でした。これらは本当に「強調表現」で、これまで「いい意味」では使わなかったイメージのある「ド」「ど」を「プラスイメージ」で使ったところが特徴でした。
しかし、この米原さんの使った「どハンサム」には、
「ほめているようで実はほめていない、『ほめ殺し』的なニュアンス」
を感じました。これに似たものでは「謙遜表現」として、
「ど・アラフォー」
2009年4月、IT関連の人材派遣会社のアメリカ人社長との結婚を発表した演歌歌手の長山洋子さん(41=当時)が、そのブログの中で自分のことを指して、
「ど・アラフォー」
と呼んでいたのが思い出されるぐらいでしょうか。
田辺聖子さんの小説で、
「ど嬶(かか)」
というのもありましたが。あと、米原さんのお友達でイタリア語通訳の田丸公美子さんのエッセイ、『シモネッタの本能三昧イタリア紀行』(講談社、2009)には、
「ド金持ちのイタリア女性」
という表現がありました。やっぱり二人はお友達だから、
「言葉の感覚もよく似ている」
のね。