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『道浦TIME』

新・ことば事情

4650「鑑(かがみ)」

 

2月24日の「ミヤネ屋」にスーパーをチェックしていたら、

「女の鏡」

というのが出てきました。この「かがみ」は「お手本」の意味ですから、「鏡」は間違い。正しくは、

「鑑(かがみ)

です。「表外訓」(常用漢字だけれども、常用漢字表にその読み方が載っていない)なので、平仮名で書くか、ルビを振って使います。つまり、

×「女の鏡」→○「女の鑑(かがみ)

です。これで思い出すのは『三省堂国語辞典・第三版』に見坊豪紀さんが書かれた「まえがき」です。

 

辞書は"かがみ"であるーーーこれは著者の変わらぬ信条であります。

辞書は、ことばを写す"鏡"であります。同時に、

辞書はことばを正す"鑑(かがみ)"であります

 

これは名文ですよねー。つまり「辞書」は時代を映す「鏡」でもあり、規範・手本としての「鑑(かがみ)」でもあると。

そのことを思い出してハッ!とひらめきました。

なぜ「鑑」を「かがみ」と読むのか?

「鑑」の訓読みは、

「かんがみる」

ですよね。その「かんがみる」の語幹部分(プラスアルファ)の、

「かんがみ」

「ん」が脱落して(縮まって)、

「かがみ」

になったのではないか!?そうすれば、意味がつながる気がする。

もしかすると、「鏡」も、「かんがみる」からきていて、同じ語源なのではないか?という気さえしてきました。

『精選版日本国語大辞典』で「鑑」を引いてみましょう。

 

「かがみ(鏡・鑑・鑒)」(「影見(かげみ)」で「かが」は「かげ」の交替形という)

 

ありゃ。全然違った。では「かんがみる」を。

 

「かんがみる(鑑・鑒みる)」(「かがみる(鑑)」の変化した語)

 

おお、では「かがみる」を引きましょう。

 

「かがみる(鑑・鑒)」(「かがみ(鏡)」の動詞化したもの)

 

やっぱり!

「かんがみる」は「かがみ」の動詞化したもの、予想は当たったというか、「逆」だったんですね。「鏡」から「かんがみる(鑑みる)」が生まれたと。「かがみ+る」の強調形(?)が「かんがみる」なのですね!いずれにせよ。「同根」であることはわかりました。

納得!

 

(2012、2、27)

2012年3月 4日 18:10 | コメント (0)