新・読書日記 2012_031
『瓦礫の中から言葉を~わたしの<死者>へ』(辺見庸、NHK出版新書:2012、1、10)
辺見庸さんと言えば、初期の「自動起床装置」や「もの喰う人々」(表記はどうだっけ?)までは読んだが、その後読まなくなっていた。「詩」のほうにもいったり、お体を悪くされたりと聞いていたが、東日本大震災を機に今回の本を書かれた。というのも辺見さんは、宮城県石巻市の生まれ・育ちなのだ。故郷が自然の脅威の前になくなっていく喪失感・何もできない自分の無力感・悲しさ・・・そういった中で「書くこと」を続けた。2011年4月24日に放送されたNHK「こころの時代 瓦礫の中から言葉を」における発言を手がかりに全面的に書き下ろした「作家渾身の書」という帯の文字に、うそ偽りはないと思う。「すべてのことは起こりうる~破壊と畏怖」自然の中では当然そうなのだが、「人間が自然を支配できる」と思う「傲慢さ」の中から「想定外」が生まれただけ・・・。「ありえないことはない」は「例外のないルールはない」のよう。本書は、とても哲学的な書である。そりゃあ、そうだろ、「生と死」について考えれば哲学的にならざるを得ない。
「第3章・心の戒厳令」には「言語の地殻変動」や、ジョージ・オーウェルの「1984年」に出てきた「ニュースピーク」も出てきます。「これでもか」と流された「AC」のCMの「ぽぽぽぽーん」は「ニュー・スピーク」に相当すると。また「ファシズム」は「上から来る」とは限らないというあたりも、とても共感できました。
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