新・ことば事情
4632「MAX」
2月8日の「ミヤネ屋」の「世界企画」で、ウクライナを訪れた笹川明人ディレクターが、スタジオ出演した際に、宮根さんにウクライナの首都・キエフの寒さについて聞かれて、
「マックス氷点下20度です」
と答えました。この「マックス」の使い方は「若者言葉」(業界用語?)で、放送(オンエアー)としては適さない表現でした。本人も放送後に反省していました。
意味は「最大」ということで分かりますが、私などの世代では使わない言葉です。耳にするのは、野球のピッチャーや、テニスプレーヤーのサーブの速さで、
「マックス150キロの速球」
「マックス250キロのサーブ」
というように使うのはよく耳にします。あ、それと、仕事の中でも、
「マックス金曜日までは待てるかな」
というような使い方も、たまに耳にします。それが、普段の生活にも使われるようになっているのでしょうか?
そう思っていたらその翌日、今度は「ミヤネ屋」の後の時間帯に関西地方で放送している、「ダウンタウンDX」(再放送=1年前の放送)に出演していた冨浦智嗣さんという若いタレントさん(?)が、そのか弱そうな見た目とは裏腹に、バーベルをベンチプレスで、
「MAX110kg挙げられる」
と話しているのが、そのまま字幕スーパーで出ていました。やはり若い人は使うのか?
「ミヤネ屋」の若いスタッフに聞いたところ、
「飲み会のセッティング(人集め)のときに、『5人からMAX10人まで』というふうには使います」
という答えが返ってきました。
また、2月12日放送の日本テレビ『世界の果てまで行ってQ』で「珍獣ハンター」のいもとあやこさんが、小笠原諸島を訪れた際のコメントで、小笠原のお天気について、
「MAX悪くてこれですよ」
と話していました。やはり「マックス」はかなり普遍的に、若い人の間では使われているようです。
辞書を引いてみると、この間出たばかりの『新明解国語辞典・第7版』には載っていません。新しい言葉をいち早く取り入れることで知られる『三省堂国語辞典・第6版』は、既に「マックス」を載せていました!
「マックス(max)」=最大限。最高値。マキシアム。
用例は載せていません。一方、『広辞苑』は用例(作例)付きで載せていました。
「マックス(max)」=(maximumの略)最大。最大限。(例)「マックスで5000人収容できる会場」
『新選国語辞典・第9版』も「マックス」を空見出しで載せていました。空見出しなのに作例もありました。
「マックス(max)」=→マキシマム (例)「マックス一五0キロのスピード」
『明鏡国語辞典』の「第1版」(電子辞書)には「マックス」は載っていませんでしたが、「第2版」には、
「マックス(max)」=「マキシマム」の略」
と、一応載せていました。
『精選版日本国語大辞典』『デジタル大辞泉』『新潮現代国語辞典』『岩波国語辞典・第7版』には「マックス」という見出しはありませんでした。おそらく、この10年ぐらいで定着した言葉なのでしょうね。