新・ことば事情
4618「勝者なんかいない」
山口・光氏の母子殺害事件の裁判で、2月20日、被告側の上告を最高裁が棄却。大月(旧姓・福田)孝行被告の死刑が、事実上確定しました。それを受けて、遺族の本村洋さん(35)が会見で、こう語りました。
「今回の判決で、勝者なんかいないと思う。犯罪が起こった時点で、みんな敗者なんです。」
なんと重い言葉でしょうか。
そして、真理を突いています。
亡くなった人は、裁判(死刑判決)によって生き返ることはないのです。
時計の針は"逆戻り"しない。
たとえ、当時何歳であっても、人の命を奪ったという事実は変わりませんし、その失われた命は、二度と取り返すことはできません。リセットできないのです。
その重みが分かっている本村さん。
怒りや、悲しみを乗り越えようと、死にものぐるいの心の葛藤が、そこまで到達するにはあったに違いありません。
13年という歳月の中で、研ぎ澄まされた本村さんの魂。
その凛とした精神が、内面からにじみ出てきているように感じます。
会見でのよどみのない言葉は、いかに本村さんの頭の中が悲しいまでにすっきりと整理されているかを、「ひとつの真理」に到達しているかを示していると思いました・・・。