新・ことば事情
4619「身心」
2月20日の「ミヤネ屋」のテロップをチェックしていたら、
「身心」
という文字が。危ない危ない、これは当然、
「心身」
だろうと思って直しました。そもそも「しんしん」で変換すれば「心身」としか出ないと思います。そこでオペレーターさんに聞いてみたら、なんとそのワープロソフトは先に、
「身心」
が出たそうです。そこで念のため辞書を引いてみると、
*「しんしん(身心・身神)」=(古くは「しんじん」とも。(1)身体と精神。体とこころ。心身。心人。(2)からだ。身体。心をあわせもつからだ。~『精選版日本国語大辞典』
*「しんじん(身心)」=からだとこころ。~『広辞苑』
*「しんしん(心身)」=心もからだも。(表記)「身心」とも書く。~『新明解国語辞典』
と載ってはいました。あるんだ、「身心」という表記も。
しかし、『新聞用語集2007年版』では、
「しんしん」=心身(精神と肉体)<例>心身ともに健全
=心神(精神、心)<例>心神耗弱、心神喪失
とあって「身心」は使われていませんでした。
Google検索では(2月20日)、
「心身」=2720万件
「身心」=1億件
でした。なんと「身心」のほうが多い!?中国語も含まれているのか?
あるサイトでは、『バカの壁』で有名な養老孟司先生が講演で、「身心」と「心身」について述べていたそうで、それによると、
『現在は「心身医学」「心身病」「心身症」のように「心」が上に来るが、昔は「恒に魔王のために、しかも僕使となって、六道に駆馳し、身心を苦節す。」(法然上人『選択本願念仏集』)や「参禅は身心脱落なり。」(道元禅師『正法眼蔵』「三昧王三昧」巻など)などのように「身」が上に来ていた。養老先生によると「身」と「心」の入れ替えは、どうやら江戸時代頃ではないかと推測されており、その理由を「何事も心がけ」という世界になってきたからだとしていた』
とのことです。ふーん。「身心」のほうが古く、現在は「心身」なんですね。勉強になりました。