新・ことば事情
4629「強暴」
奈良の警察官が発砲したのは違法か?適法か?の裁判の中で、被告側の言葉として出てきた言葉に、
「強暴」
というのがありました。え?
「凶暴」
の間違いじゃないの?と思って辞書を引いてみると、「強暴」って言葉、あるんですよね。
(広辞苑)①強く荒々しいこと②強迫して暴行を加えること。(例)強暴に屈する。
(明鏡国語辞典)強くて荒々しいこと。
(精選版日本国語大辞典)①強く荒々しいこと。また、そのさま。②強迫し乱暴すること。
(デジタル大辞泉)①強くて荒々しいこと。また、そのさま。(例)強暴なるスパルタに争抗し」②強迫や暴行を加えること。
(新明解国語辞典)力が有って乱暴な様子。
『三省堂国語辞典』は「強暴」を見出しに載せていませんでした。
また、『精選版―――』によると、
「彊暴」
とも書くようです。
一方の「凶暴」は、
(広辞苑)凶悪で乱暴なこと。(例)凶暴な犯人、凶暴性
(明鏡国語辞典)人を殺傷するほど乱暴なこと。(例)凶暴な犯人(性格)
(精選版日本国語大辞典)性質が非常に悪くて荒々しいこと。凶悪で乱暴なさま。
(デジタル大辞泉)性質が残忍で非常に乱暴なこと。また、そのさま。(例)凶暴な犯人、凶暴性を帯びる
(新明解国語辞典)非常に乱暴で、人を殺傷するようなことも平気でする様子。(例)凶暴性
「明鏡」と「新明解」は、
「人を殺傷する」
というのが含まれているのが「凶暴」の特徴ですね。これは確かにそうでしょう。
どうやら「強暴」が見かけの行動が荒々しいのに対して、「凶暴」は内面的な性格を主に指していて、それが表現系として表にも出てくる、あるいは、普段は「なり」を潜めているが、一旦出ると恐ろしい、そんな感じを持っているような気がします。「強暴」は「粗暴」な感じで偶発的な犯罪を起こしそうですが、「凶暴」は意外にも綿密・緻密に仕組んだ残忍な犯罪を起こしそうな気がします。その辺のニュアンスの違いなのかもしれません。ちなみにGoogle検索(2月20日)では、
「強暴」=514万件
「凶暴」=585万件
でした。意外と「強暴」は使われているのですね・・・。