新・ことば事情
4613「褐色のダイヤ」
2月13日の「ミヤネ屋」で、ホイットニー・ヒューストン急死のニュースをお伝えしました。そのホイットニー・ヒューストンのデビューアルバム。邦題は、
『そよ風の贈りもの』
ですが、原題は、
『Whitney Houston(ホイットニー・ヒューストン)』
でした。原稿&スーパーは「邦題」を採用していました。「デビューアルバム」はどちらが正しいのか?と悩みましたが、どちらも正しかったのです。
また、ホイットニー・ヒューストンを称して、
「褐色の歌姫」
という原稿とスーパーが出てきました。これはちょっと人種的な差別の感じがしたので、「×」をつけておき、ディレクターがその表現をやめたようです。
しかし翌日14日の読売新聞朝刊で、音楽評論家・安倍寧(やすし)氏が書いた追悼記事で、
「この褐色のダイヤモンドには、もっと長く輝き続けて欲しかった。」
というように、
「褐色のダイヤモンド」
と「褐色の~」という表現が出てきました。外部筆者の表現は勝手に直せないのだと思いますが、読売新聞側がつけるはずの見出しも、
「歌だけで輝いた『褐色のダイヤ』」
というように「褐色の」を使っています。これは差別的な表現とは捉えていないということなのでしょう。
以前「平成ことば事情」では、サッカーの「ジーコ」が「白いペレ」と呼ばれていたことに関して、その表現を使うかどうか?ということを書きました。(「平成ことば事情717」)その中では、元カメルーン代表のエースストライカー・エムボマ選手も、Jリーグのガンバ大阪に所属していた時に、
「なにわの黒ヒョウ」
と呼ばれたことや、カナダの陸上短距離・ベン・ジョンソン選手が、
「褐色の弾丸」
と呼ばれたことも挙げました。しかし、それらは今から18年~25年ほど前のことです。21世紀の日本では「褐色の~」は、いいのかなあ。あまり厳しいことを最近はまた言わなくなっているということでしょうか?いずれも「外国人」に使われていますね。なお、安倍寧氏はヒューストン(外国人)に、
「享年48」
という表現も使っています。「享年」は、外国人に使った例も古くはあるそうですが、なじまない感じもします。マイケル・ジャクソンが亡くなったときに、
「享年50」
という表現が「ミヤネ屋」でも出てきましたが、放送前にそれは削除しました。