新・ことば事情
4610「速度を落として運転」
先日、東京出張の日。前日からの大雪で、新幹線は、やはり遅れていました。40分の遅れだそうです。1時間ぐらい余裕を持って出たので、会議にはちょうど間に合いました。
その新幹線車内での文字盤掲示を見ていたら、このような表示が。
「名古屋~新大阪間は、残雪のため、速度を落として運転しています。」
これを見て思ったのは、
「あれ?『速度を落として運転しています』なんだ!」
ということ。というのも以前はたしか、
「ひかりは120キロの徐行運転」
というように「徐行」という表現をしていたのです。
「時速120キロ」というスピードは、ふだん時速300キロで走っている「新幹線ひかり(のぞみ)」にとっては「徐行」なのでしょうが、一般的に「徐行」と言ったら、
「ブレーキをかけたらすぐに止まれるスピード」
「時速10キロから、せいぜい20キロぐらい」
をイメージしていたので、「特急並みのスピードである120キロ」を「徐行」と呼ぶ感覚にはついていけない、放送でその用語をそのまま使ってはいけないのではないか?ということで、新聞用語懇談会放送分科会でもその旨の発言をして、それが『放送で気になる言葉2011』の76ページにも載っています。
でも最近は「徐行」という表現をやめたのかもしれません。
より分かりやすい表現、業界的ではなく一般に近い表現にしてくれたのだなと、雪での遅れも気にせず、ちょっとうれしくなったのでした。富士山もきれいに見えました。