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『道浦TIME』

新・読書日記 2012_017

『ハシズム~橋下維新を「当選会見」から読み解く』(第三書館編集部編:2012、1、1第1版)

 

この出版社に関しては「左」っぽいイメージを持っていたが、「ファシズム」ならぬ「ハシズム」には興味があるので購入。なんと半分以上は橋下徹氏が大阪市長選に勝利したあとの延々続いた記者会見を「実録」したもの。宮根誠司さんや「ハルカワ」解説委員、「フジムラ」リポーターといった「ミヤネ屋ファミリー」の発言をはじめ、各マスコミの記者の質問が実名で載っている。その意味では「ドキュメント」というか「実録モノ」だ。そしてその会見を"読んで"の感想を、「第三書館」的文化人が書いていると、まあそんな感じの一冊。記者会見はテレビで見たが、全部見たわけではないので、これを読んで全体像がつかめた。勉強になった。

橋下市長のいう「民意」というのは、彼に投票した「75万票」という人たちのこと。投票率が60%で、そのなかで23万票差をつけたということは、彼の得票率は約60%。ということは、大阪市の全有権者の60%×60%=36%の支持を受けたに過ぎない。残りの64%の市民は「反対」もしくは「賛成ではない」(興味がない?)という立場である。まるで「36%」だけが「100%」のように見せかける「民意」という言葉は、警戒したほうがいい。オールマイティーのカードではないと思う。だから民主主義には「多数決の原理」を補完する「少数意の尊重」があるのだが、これは得てして忘れられがちだ。時として故意に「忘れ」られる。「民意」を手にしたという人たちによって。

先日、「反ハシズム」の人たちがデモ行進をしているニュースを見かけたが、その人たちのプラカードに、

「これも民意だ」

と書かれていた。そのとおり!「民主主義」とは、

「あなたの意見には賛成できないが、あなたが意見を述べる権利は命をかけて守る」(ヴォルテールの格言といわれる)

という姿勢である。それがない世の中は「表現・言論の自由」がない世の中、「ファシズム(全体主義)」の世の中に、違いありません。

 

 


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(2012、1、28読了)

2012年2月13日 20:34 | コメント (0)